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The Wilderness Yet『Westlin Winds』Scribe Records, 26 July 2024
デ・ダナンの元メンバー、チャーリー・ピゴットの息子さん、ローワン・ピゴットのバンドってもう紹介しなくて良いのかな。ワイルダネス・イェットの新作『Westlin Winds』が届きました。もう4枚目になるそうです。これまで〈The Wilderness Yet〉や〈The Holly And The Ivy〉などの曲で無伴奏の魅力的なコーラスを聴かせてくれましたが、今回はお得意のフィドルやギターを置き、その無伴奏コーラスで一枚のアルバムを作り上げました。
全9曲。タイトル曲の〈Westlin Winds〉はディック・ゴーハンの歌唱で有名なロバート・バーンズの名曲。紅一点のロージー・ホジソンはソロ作『Rise Aurora』でも取り上げていますが、ベガーズ・ヴェルヴェットの『Lady of Autumn』で学んだ彼女のオールタイム・フェヴァリット・ソングとのこと。ベガーズのこのアルバムはトラモナでも隠れた名盤のうちの一枚で、ロージーに自ずと親しみを覚えてしまいます。
またシャーリー・コリンズも『The Power of the True Love Knot』で唄っていた〈Black-Eyed Susan〉は『ベガーズ・オペラ 』で有名なジョン・ゲイの作品。ここでワイルダネス・イェットが唄うのはアパラチアン・ヴァージョンで、『The Invisible Comes to Us』におけるエリザベス・ラプリールの歌唱をお手本にしたようです。大西洋を渡ったバラッドが再びイングランドに帰って来ました。
他にロージーが父親から受け継いだ古いメロディーをA・L・ロイドやマーティン・カーシーの唄う曲のリズムに組み合わせた〈Byker Hill〉や『Andy Irvine Paul Brady』におけるポールに多くを負い、初めてコーラスで唄った〈Mary and the Soldier〉、お手本はナンシー・カーのオーストラリア・ヴァージョンという〈Adieu Sweet Lovely Nancy〉、唯一フィリップ・バーンズがリードを唄う古典的なナイト・ヴィジティング・ソング〈Cocks Are Crowing〉など聴きどころが満載。ウォータソンズやヤング・トラディションなどのアルバムと並べて置きたい素晴らしい一枚、ホント名盤です。
ご来店の際にリクエストしてください。
7月27日(土)は都合により15時00分までの営業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。
7月14日(日)は都合により13時00分からの営業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。
最近届いた英国トラッドの新作CDのご紹介です。アリス・ジョーンズ以外はどれもデビュー作。伝統へのリスペクトでしょうか、若々しいながらもかつてのTopicやTrailerのテイストも感じることができます。ご興味のある方はご来店の際にリクエストしてください。
Goblin Band『Come Slack Your Horse!』Broadside Hacks, 1 May 2024
ロンドンの楽器店ホブゴブリンに集まったクィアの若者6人によって結成されたトラッド・バンド。フィドルやアコーディオン、ハーディ・ガーディなどが力強い歌声をバックアップし、陰りを帯びたドラマチックな演奏が少しスティーライを想わせます。いま話題のブロードサイド・ハックスからのデビュー作。そのリフレインからアルバムタイトルをとった〈The Prickle Holly Bush〉はツェッペリン〈Gallows Pole〉の別バージョンです。
Seb Stone『Young Tamlyn’s Away』Self-released, 30 March 2024
イングランドはシェフィールドを拠点に活躍するセブ・ストーンのデビューアルバム。ホイッスル、イーリアン・パイプ奏者のセブは唄も能くし、イングリッシュのみならず、マーガレット・バリーやラディ・ピートをお手本にしたアイリッシュにまでレパートリーを広げています。プロデュースはワイルドネス・イェットのローワン・ピゴット(デ・ダナン、チャーリー・ピゴットの息子さん)。マイク・ウォータソンの歌唱から習った〈The Whitby Lad〉ではローワンを始めロージー・ホジソン、マット・クイン、ジョージ・サンサム、ジャニス・バーンズ、ジョン・ドーランなど今を時めく若い精鋭たちがコーラスで参加しています。また〈The Alehouse〉ではソースシンガーである南イングランドのトラヴェラー、トム・ウィレットの歌声も収録し、ウィレットさらには英国の伝統に敬意を表しています。
Living With Machines『Living With Machines』Self-released, 15 March 2024
ブライオニー・グリフィスと組んだ2作が頗る評判の良いアリス・ジョーンズの新しいプロジェクトです。リーズ市立博物館と大英図書館が共同企画した展覧会の一環で、19世紀の産業革命が人々の日常生活に与えた劇的な影響を伝統歌を通じて探ろうとしています。アリスのほかピート・ディリー、サイモン・ロビンソン、ケイティ・ライダーのヨークシャーを拠点とするフォーク・アーティストが参加し、大英図書館が所蔵するトラッドのコレクションの中から9曲を唄っています。一人2曲ずつリードヴォーカルを担当し、4人で交互に唄う曲が1曲あり、ブズーキやハーモニウム、バンジョー、サックスなどを駆使した演奏はさながらBandoggsやMuckram Wakesを想わせます。
Amy Leach & Alasdair Paul『Six Sangs』Self-released, 29 February 2024
エディンバラ出身のシンガー、エイミー・リーチとハイランド出身のギタリスト、アラスデア・ポールによるデュオ1作目のEPです。スコットランドのトラヴェラー、スタンリー・ロバートソンの歌唱から学んだ〈Moorlough Maggie〉やかつてタンジェント盤『The Muckle Sangs』に収められていたベッツィ・ジョンソンによるタムリンのスコットランドヴァージョン〈Lady Margaret〉などタイトルどおり全6曲。その中で〈Jamie Foyers〉はイワン・マッコールがスコットランドのトラッド〈Young Jamie Foyers〉の第1節を残し、舞台を半島戦争からスペイン内戦に移して書き換えたもの。国際旅団の義勇兵としてフランコのファシスト陣営と戦い戦死したクライド川の造船労働者ジェイミー・フォイヤーズを唄っています。この地球上に一人のファシストも残すなと唄う最後の一行が印象的ですが、ディック・ゴーハンやドロレス・ケーン&ジョン・フォークナーの名唱もあるのでご存じの方も多いのでは。ここでエイミーはイワンの歌詞をシーラ・スチュワートの唄った伝統的なオリジナルのメロディで唄っています。若いながらもスコットランドの伝統への気概がヒシヒシと伝わる一枚です。
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