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カフェトラモナ8月のおすすめです。
上左:Mama's Broke / Narrow Line(Free Dirt Records, 2022)
リサ・マリアとエイミー・ルウ・キーラーのママズ・ブロークはノバスコシア州ハリファックスのフォーク・デュオで、本作はセルフ・リリースの『Count The Wicked』に続く2ndアルバムになります。主にギターとバンジョーのエイミー・ルウがリードを唄い、マルチ奏者のリサ・マリアがフィドルやマンドリンでバックアップ。数曲でベースとドブロの客演があるほか全て2人でスリリングかつ美しい演奏と歌声を聴かせます。インストを含め全曲がオリジナルで、地元ノバスコシアは勿論のこと、英国やアパラチア、遠くは東ヨーロッパのトラディショナル・ミュージックの色濃い影響はボーダーなきフォークと云われる所以です。共同プロデュースがあのビル・ギャレットというのもカナダのSSWファンにとって嬉しい驚きです。
上右:Karen Dalton / Shuckin' Sugar(Delmore Recording Society, 2022)
この春RSDのアイテムとしてリリースされたカレン・ダルトンの未発表音源集。今回発掘されたのは『Cotton Eyed Joe』の翌年1963年1月のコロラド州ボルダーのフォーク・クラブThe Atticのライヴ音源(1曲のみ64年2月9日コロラド大学で開催されたC.O.R.E.人種平等会議のための慈善コンサートから)で、パートナーのリチャード・タッカーとのデュエットが聴けるトラックが5曲含まれています。トラディショナル中心の選曲で、フレッド・ニールやティム・ハーディンなどのカヴァーはありませんが、デイヴ・ヴァン・ロンクやジム・クウェスキンも唄ったスタッフ・スミスの〈If You're A Viper〉やE・C・ボールのゴスペル曲〈When I Get Home〉などこれまでカレンの歌声で聴くことのできなかった楽曲が6曲収録されています。
下左:Leyla McCalla / Breaking The Thermometer(Anti-, 2022)
キャロライナ・チョコレート・ドロップスやアワ・ネイティヴ・ドーターズのメンバーだったレイラ・マッカラの4枚目のソロ作。ハイチに出自を持つレイラが、2000年にジャーナリストで社主のジャン・ドミニクが暗殺されたラジオ・ハイチのアーカイブにインスパイアされて出来上がった、レイラ個人の物語、ラジオ・ハイチの物語、そしてハイチとアメリカの関係の物語を唄ったアルバムです。自作曲やハイチの伝統曲がクレオール語で唄われるなか、カエターノ・ヴェローゾが亡命中のロンドンで録音した〈You Don't Know Me〉が唄われるのが頗る印象的です。
下右:Nathan Salsburg / Affirmed(No Quarter, 2011)
先月ヘブライ語で詩篇を唄った最新作『Psalms』を紹介したネイサン・サルスバーグのソロ1stです。全8曲中7曲がジョン・フェイヒーやバート・ヤンシュ、ニック・ジョーンズなどの影響を窺わせるフィンガー・スタイルのオリジナル・インスト曲。残る1曲はかつてシャーリー・コリンズが唄い、アラン・ロマックスが録音したトラッド曲〈False True Love〉。ここでネイサンはメイデン・ラジオのジュリア・パーセルをコーラスに従え、朴訥乍らも存在感のある歌声を披露してくれます。2ndでもアーチー・フィッシャー1曲と出し惜しみ(?)のネイサンですが、ジョン・スミス『Hummingbird』クラスのトラッド弾き語りアルバムが欲しいところです。
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カフェトラモナ7月のおすすめです。
上左:Joan Shelley / The Spur(No Quarter, 2022)
米国はケンタッキーにあってその佇まいがサンディ・デニーを想わせるジョーン・シェリーの新作。旅先のレイキャビクで地元のミュージシャン達と録った『Like The River Loves The Sea』から3年、ケンタッキーに戻って久々のスタジオ録音です。ベーシック・トラックを夫君のネイサン・サルスバーグと二人で録り、ジェイムズ・エルキントンのプロデュースのもと、ストリングスやブラスなど追加のトラックをダビングし、ビル・キャラハンやメグ・ベアードのヴォーカルはリモートでレコーディングしたようです。レナード・コーエンの〈You Want It Darker〉を引用した〈When The Light Is Dying〉、アンサンクスやカリン・ポルワートにでも唄わせたいトラッドライクな〈Between Rock & Sky〉など聴きどころ満載です。
上右:Nathan Salsburg / תהלים = Psalms(No Quarter, 2021)
ジョーン・シェリーのギタリストのほか、シャーリー・コリンズ『Heart's Ease』での客演、アラン・ロマックス『Root Hog Or Die』などのライナーでトラモナでもお馴染みのネイサン・サルスバーグですが、ソロ作のコレクションはこれが初めて。昨年夏にリリースされた4枚目のソロ・アルバムになります。旧約聖書に収められた「詩篇」(サーム)に曲を付け、ヘブライ語で唄った意欲作で、ジェイムズ・エルキントンやジョーン・シェリー、ウィル・オールダムなどいつものメンバーにサポートされていますが、特にヘブライ語の歌唱指導などイスラエルのSSW、Noa Babayofの貢献が大きかったようです。制作にあたって心がけたように心地の良いアルバムになりました。
下左:Sandy Denny / Early Home Recordings(Earth, 2022)
フェアポート加入前のサンディ・デニーのホーム・デモは80年代の終わり頃から豪ファンクラブ発行のカセット・テープなどで少しずつ紹介されてきましたが、決定打となったのは2010年11月アイランドからリリースされた19枚組CDボックス『Sandy Denny Box Set』でした。19枚中8枚が未発表音源で、ホーム・デモは〈Who Knows Where the Time Goes?〉の2つのバージョンを含む27曲が収録されていました。本作はその27曲を網羅した2枚組アナログ盤で、ホーム・デモ単独でのリリースは初めてになります。アン・ブリッグス作の〈The Time Has Come〉と〈Go Your Own Way My Love〉のほか、トラッドの〈She Moves Through The Fair〉や〈Let No Man Steal Your Thyme〉も唄われていますが、どちらもエジンバラ・フォーク・フェスティバルのライヴ・アルバムにアンの歌唱が収録されている楽曲。偶然ではないでしょう。
下右:Eoghan Ó Ceannabháin & Ultan O'Brien / Solas an Lae - The Light of the Day(Watercolour Music, 2020)
Eoghan Ó Ceannabháinはアイルランド・コネマラ出身のゲーリック・シンガー。2015年にスコットランドのメアリー・アン・ケネディが招集したAon Teangaの一員で、ダブリンのトラッド・バンド、スキッパーズ・アレイの初期のメンバーでした。相棒のUltan O'Brienはそのスキッパーズ・アレイで今でも活躍するフィドラーで、お互いバンド仲間でもあります。既にデータ配信はされてはいたもののフィジカルのアナログ盤がリリースされ届いたのがこの春。歌声とフィドルのアルバムは圧巻で、予約から1年以上待たされた甲斐があるというものです。Treasa Ní Mhiolláinの歌声をサンプリングした〈Cuirt Bhaile Nua〉など鬼気迫るトラックが並んでいます。
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