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2020-05-31 14:57:00
カフェトラモナ6月のおすすめレコード

カフェトラモナ6月のおすすめです。

 

上左:Frazey Ford / U kin B the Sun(2020)

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元ビー・グッド・タニヤスのフレイジー・フォードのソロ3作目です。2014年の前作『Indian Ocean』はメンフィスのロイヤル・スタジオに赴き録ったハイ・サウンドの響きが心地よいソウルフルなアルバムでしたが、今回は地元ヴァンクーヴァーに戻っての録音。ここにはハイ・リズム・セクションやホーン・セクションはありませんが、共同プロデューサーのジョン・ラハムを始めとするツアー・バンドが大健闘。前作に勝るとも劣らないフォーキーかつソウルフルなアルバムに仕上がりました。蛇足ながらフレイジーは本作に先立ってディアンジェロやファンカデリックをカヴァーして配信しています。

 

上右:James Elkington / Ever-Roving Eye(2020)

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ジェイムズ・エルキントンは英国出身で現在はシカゴで活躍するSSW/ギタリスト。ジェフ・トウィーディ、プロデュースのリチャード・トンプソン『Still』にはギタリストとして参加していました。本作はソロ2作目で、英国のオンライン・マガジン『Folk Radio』のディスク・レビューではB・ヤンシュ、N・ドレイク、D・グラハム、S・アシュレイなどブリティッシュ・フォークのレジェンドやヴァーチュオーゾを数多く掲げ本作を紹介していますが、なるほど一聴して想い起すのがペンタングル。ジェイムズの卓越したギター・ワークにニック・マクリのウッド・ベースが拍車をかけています。全曲自作、録音はウイルコの"ロフト"で行われています。

 

下左:Serious Child / Time In The Trees(2020)

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英国のSSW、シリアス・チャイルドことアラン・ヤングの2作目。サセックスの森の中で過ごした1年間の生活を歌に綴ったアルバムで、デビュー作と同様にブー・ヒュワディーンが制作し、ブーの穏やかなプロダクションがスコット・ウォーカーを想わせるアランの歌声を際立てています。中でもジョン・マッカスカーとベサニー・ポーターが参加した〈The Oak〉はトラディショナルなアイリッシュ・フレイバーを感じさせる名曲で、ジョン・ボーデン辺りのトラッド・シンガーに歌って貰いたいほどです。またBBC放送で紹介された盆栽師 山本千城子さんにインスパイアされた〈Bonsai〉なんて曲もあります。

 

下右:Karen Dalton / Recording is the Trip – The Karen Dalton Archives(2020)

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これまで何回も発売が延期されていたカレン・ダルトンのボックスがやっと到着しました。既にCDでリリースされている62年のライヴ盤『Cotton Eyed Joe』と63年のホーム・レコーディング音源集『Green Rocky Road』の初アナログ化です。この2枚のアルバムのリマスター盤3LP/3CDがメインで、これにブックレットとTシャツが付属しています。当初予定されていたDVDと未発表音源CDは付いておらず、未発表音源13曲がダウンロードできるようになっています。その未発表音源ですが、『Green Rocky Road』のアウトテイクで、既出の〈In the Evening〉で少し聴かれたジョー・ループのドラムが大きくフィーチャーされ、リチャード・タッカーがサックスを吹いているのが肝でしょう。ディランから「ビリー・ホリデイのような歌声」と云われていたカレンのこと、あって当然のジャージーなアプローチと思われます。

   

ご来店の際にリクエストしてください。

2020-05-04 10:39:00
カフェトラモナ5月のおすすめレコード

カフェトラモナ5月のおすすめです。

 

上左:Shelby Lynne ‎/ Shelby Lynne(2020)

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2月のおすすめレコードで実妹アリソン・ムーラーとのデュオ・アルバム『Not Dark Yet』をご紹介したシェルビー・リンの通算16作目の最新作です。ニーナ・シモンの伝記映画『Nina』を手掛けたシンシア・モート監督の新作映画『When We Kill the Creators』にシェルビーが出演したことを切っ掛けに生まれたアルバムで、殆どの曲の作詞をモート監督が担当し、シェルビーがピアノ、ギター、ベース、ドラムなどバックの演奏を基本ひとりで行っているなど話題に事欠きません。が、一番の魅力はダスティ・スプリングフィールドを想わせるカントリー・ソウルな彼女の歌声で、その意味では2008年の『Just A Little Lovin'』と並ぶシェルビーの代表作でしょう

 

上右:Dean Owens ‎/ The Man From Leith (The Best of Dean Owens)(2020)

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エジンバラ出身のディーン・オウエンズはスコットランドのSSW。90年代の中頃からオルタナ・カントリー・バンド、フェルソンズのフロントマンとして活躍し、既にソロ・アルバムも7枚リリースしています。初めの1、2作こそスコットランドで録音されていましたが、3作目以降はアル・パーキンスやウィル・キンブロウらを招きナッシュヴィルやニューヨークで制作しているようです。本作はベスト・アルバムですが、そのロン・セクスミスを想わせる端正な歌声はすべてのアルバムを聴いてみたくなるほどの魅力を湛えています。トラックによってはカリン・ポルワートとのデュエットも聴け、現在アリゾナのツーソンで進められているキャレキシコとの新録が待ち遠しい1枚です。

 

下左:Tim Easton ‎/ Exposition(2019)

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ラッカー盤に直接レコーディングする昔ながらの方式で録音された前作『Paco & the Melodic Polaroids』が素晴らしかったティム・イーストン。ソロ10枚目の本作はアメリカの音楽史にとって重要な意味を持つ3か所で“フィールド・レコーディング”されたベーシック・トラックに必要に応じて自身のピアノやパーカッションなどを被せただけのアコースティック・アルバムです。その3か所とはウディ・ガスリーが生まれたオクラホマ州オケマーの博物館、ロバート・ジョンソンの歴史的録音が行われたテキサス州サン・アントニオのガンター・ホテル、マディ・ウォーターズ揺籃の地ミシシッピ州クラークスデールにあるシャック・アップ・インで、フォーク・シンガーとしてのティム・イーストンの心意気がヒシヒシと伝わるアルバムです。

 

下右:Geoff Muldaur And The Texas Sheiks / Texas Sheiks(2009)

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5月8日に11回目の命日を迎えるテキサスのSSW/ギタリスト、スティーヴン・ブルトン。闘病中のスティーヴンを励まそうと古くから親交のあったジェフ・マルダーが中心になってテキサスやボストンの仲間と立ち上げたプロジェクトで、メンバーは『The Secret Handshake』でスティーヴンと一緒にジェフをバックアップしていたジョニー・ニコラス、リゼントメンツでの盟友ブルース・ヒューズなど。もちろんジム・クエスキンも参加しています。スティーヴンはヴォーカルこそ披露していませんが、ギター、マンドリン、バンジョーで大活躍、〈All By Myself〉では渾身のギター・ソロも聴かせてくれます。90年3月青山スパイラルガーデンのステージでジェフとマリアの元夫妻をバックアップしていたスティーヴン。クリス・クリストファーソンのバンドでキャリアをスタートさせたテキサスのギタリストとボストンのフォーキー達との結びつきが長い間イメージできなかったのですが本作のライナーで納得。ビル・キースのバンジョーが取り持った縁だったのですね。合掌。

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