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クリスマス・シーズンがやって来ました。シーズンに併せて今年もJackie Oates & John SpiersやJanice Burns & Jon Doran、The Unthanksなどお馴染みのミュージシャンのクリスマス・アルバムがめじろ押しです。トラモナでは昨年に引き続き良質のクリスマス・アルバムを こちら でご紹介していきます。先ずはアメリカはオレゴン州からSSWのアリーラ・ダイアンとトラモナ一押しのハックルズが昨年リリースした『It's Always Christmas Somewhere』です。
The Davenports『Strange Vagaries』Hallamshire Traditions, 16 August 2024
かつて新生アルビオン・バンドでブライアー・ダンロップをフォローし、大活躍したゲイヴィン・ダヴェンポートの新作です。妻のエイミー、父母のポールとリズのダヴェンポート一家でリリースした初めての作品で、ワイルダネス・イェットの『Westlin Winds』に続いて届いた、素晴らしい無伴奏コーラスのアルバムです。
昨今コーエン・ブレイスウェイト・キルコインやブライオニー・グリフィス&アリス・ジョーンズなど若いシンガーに採りあげられることの多い〈Hunton Sword Dance Calling-On〉で始まるアルバムは全12曲。8曲のトラッドのほか、ポールの自作曲2曲、ゲイヴィンとポールの共作曲1曲に加えてピーター・ベラミーのキプリング曲〈Recessional〉が唄われています。
かつてデイヴ&トニ・アーサーが唄った〈Padstow Drinking Song〉やシーラ・スチュワートお気に入りの訣別の〈Here's a Health to the Company〉などレアなトラッドが並びますが、〈Adieu My Lovely Nancy〉はワイルダネス・イェットと共通の選曲。しかしワイルダネス・イェットがお手本にしたのはナンシー・カーのオーストラリア・ヴァージョンで、ダヴェンポーツが唄うのはR・A・ガッティが1907年にブラッドフィールドで採譜したヴァージョン。ガッティは大学時代の友人レイフ・ヴォーン・ウィリアムズに励まされたとか。何れにしても渋い選択です。
この他にエイミー&ゲイヴィン・ダヴェンポートの最新作『A Boat of Promises』(2019)やポール&リズ・ダヴェンポートの初期作『Under the Leaves』(2006)と『Spring Tide Rising』(2011)もコレクションできました。特に『A Boat of Promises』ではスタン・ロジャースの〈The Jeannie C〉も唄われています。こちらも併せてお聴きください。
ご来店の際にリクエストしてください。
My Darling Clementine, Steve Nieve『カントリー・ダークネス -エルヴィス・コステロを歌う-』CA VA? RECORDS/HAYABUSA LANDINGS, 2024
先日ご来店いただいた麻田浩さんのトムズキャビンが招聘するマイ・ダーリン・クレメンタインの来日記念盤『カントリー・ダークネス -エルヴィス・コステロを歌う-』が届きました。マイ・ダーリン・クレメンタインは90年代からオルタナ・カントリー・ロック・バンドThe Good Sonsのフロントマンとして、またソロアーティストとしても数々の名盤をリリースし活躍するSSWのマイケル・ウェストン・キングが奥様のルー・ダルグリーシュとイングランドはバーミンガムで結成したデュオ。本作は2019年秋から2020年夏にかけてリリースされた3枚の4曲入りEPアナログ盤を1枚のCDに纏めたコステロ曲のカヴァー集です。トラモナでコステロと云えばこのアルバムを指す時期もあったほど。ボーナストラックや訳詞、解説のついた充実の来日記念盤をお楽しみください。
またタウンズ・ヴァン・ザントが参加し、渋い歌声を聴かせるグッド・サンズの1st『Singing The Glory Down』(スタイリスティックスの〈You Are Everything〉もカヴァー‼)などを始め、名盤の誉れ高いソロ第1作『God Shaped Hole』やザントの死を悼んだ自作曲とザント曲のメドレーが素晴らしい『Live... In Dinky Town』、ジェブ・ロイ・ニコルズも参加した2022年のソロ最新作『The Struggle』などもございます。これを機会に優れたSSWマイケル・ウェストン・キングのすべてを聴き直し、是非来日公演に臨んでは如何でしょう。
ご来店の際にリクエストしてください。
10月に再びやって来るノラ・ブラウンをリリースしているブルックリンのジャロピーレコードからノラとも共演歴のあるジャクソン・リンチの在籍するダウン・ヒル・ストラグラーズの新作をはじめ素晴らしいアルバムが届きました。ご紹介いたしますのでご興味のある方はご来店の際にリクエストしてお聴きください。
Down Hill Strugglers『Old Juniper』Jalopy Records, August 2024
メンバーのイーライ・スミスとウォーカー・シェパードが出会ったのはホーリー・モーダル・ラウンダーズのピーター・スタンフェルの自宅だったとか。そこで二人はニュー・ロスト・シティ・ランブラーズのジョン・コーエンと初めて出会います。そんなエピソードがダウン・ヒル・ストラグラーズをますます興味深い存在に。彼らの7年ぶりのアルバムがジャロピーから届きました。全11曲がすべてオリジナル。イーライが5曲、ウォーカーが6曲を書き、リードヴォーカルはウォーカーが4曲、ジャクソン・リンチが2曲で受け持っています。タイトル曲の〈Old Juniper〉はニューヨーク郊外にあるウォーカーの姉所有の納屋で録音されたインスト。ウォーカーとジャクソンの弾くバンジョーとギターの隙間からコウロギの鳴き声が聞こえてきます。
Ever Lovin' Jug Band『Move That Thing』Jalopy Records, July 2024
ミニー・ハートとビル・ハワードからなるエヴァー・ラヴィン・ジャグ・バンドはカナダのバンド。これまでオーセンティックなジャグ・バンド・ミュージックを演奏してきましたが、ウィスラーズ・ジャグ・バンドやメンフィス・ジャグ・バンドなどの時代から100年が経つ現在、ジャグの演奏に可能性を求め、ロックンロールやドゥーワップはもとより、R&B、ガレージロック、グラムロックなど様々なジャンルの音楽に適用し、ジャグ・ブローの限界を押し広げようとしています。そしてオリジナルのジャグ・バンドをまだ知らないリスナーはぜひ聴いて、ジャグを吹いてみるのも良いかもしれないとのこと。ジャグ・ブローがこれから100年続きますようにだそうです。
Wyndham Baird『After the Morning』Jalopy Records, May 2024
ウィンダム・ベアードの出身はノースカロライナ州の片田舎。大学進学のためにアシュビルに移り住みましたが、大学を中退し旅をしながら唄うことを決意します。唄のお手本はドク・ワトソンとボブ・ディラン。トラモナではトム・ラッシュの歌声でお馴染みのエリック・フォン・シュミット作〈Joshua Gone Barbados〉もディランのブートで習ったとか。他にジミー・ロジャースの〈Waiting For A Train〉やトラッドの〈The House Carpenter〉や〈The Water Is Wide〉などが並び、朴訥な歌声と相俟って往年のフォークシンガーのアルバムを想いうかべますが、最後の〈She Chose Me〉は2017年リリースのランディ・ニューマン『Dark Matter』から。こんな所に新しさが感じられます。全13曲はギターとハーモニカの弾き語り。うちカーター・ファミリーの〈Meet Me By the Moonlight, Alone〉ではサモア・ウィルソンがボーカルで、プロデューサーのイーライ・スミスがオートハープで参加し、マイク・シーガーでお馴染みの〈Oh, My Little Darling〉ではイーライがバンジョーを弾き、華を添えています。
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