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最近届いた英国トラッドの新作CDのご紹介です。アリス・ジョーンズ以外はどれもデビュー作。伝統へのリスペクトでしょうか、若々しいながらもかつてのTopicやTrailerのテイストも感じることができます。ご興味のある方はご来店の際にリクエストしてください。
Goblin Band『Come Slack Your Horse!』Broadside Hacks, 1 May 2024
ロンドンの楽器店ホブゴブリンに集まったクィアの若者6人によって結成されたトラッド・バンド。フィドルやアコーディオン、ハーディ・ガーディなどが力強い歌声をバックアップし、陰りを帯びたドラマチックな演奏が少しスティーライを想わせます。いま話題のブロードサイド・ハックスからのデビュー作。そのリフレインからアルバムタイトルをとった〈The Prickle Holly Bush〉はツェッペリン〈Gallows Pole〉の別バージョンです。
Seb Stone『Young Tamlyn’s Away』Self-released, 30 March 2024
イングランドはシェフィールドを拠点に活躍するセブ・ストーンのデビューアルバム。ホイッスル、イーリアン・パイプ奏者のセブは唄も能くし、イングリッシュのみならず、マーガレット・バリーやラディ・ピートをお手本にしたアイリッシュにまでレパートリーを広げています。プロデュースはワイルドネス・イェットのローワン・ピゴット(デ・ダナン、チャーリー・ピゴットの息子さん)。マイク・ウォータソンの歌唱から習った〈The Whitby Lad〉ではローワンを始めロージー・ホジソン、マット・クイン、ジョージ・サンサム、ジャニス・バーンズ、ジョン・ドーランなど今を時めく若い精鋭たちがコーラスで参加しています。また〈The Alehouse〉ではソースシンガーである南イングランドのトラヴェラー、トム・ウィレットの歌声も収録し、ウィレットさらには英国の伝統に敬意を表しています。
Living With Machines『Living With Machines』Self-released, 15 March 2024
ブライオニー・グリフィスと組んだ2作が頗る評判の良いアリス・ジョーンズの新しいプロジェクトです。リーズ市立博物館と大英図書館が共同企画した展覧会の一環で、19世紀の産業革命が人々の日常生活に与えた劇的な影響を伝統歌を通じて探ろうとしています。アリスのほかピート・ディリー、サイモン・ロビンソン、ケイティ・ライダーのヨークシャーを拠点とするフォーク・アーティストが参加し、大英図書館が所蔵するトラッドのコレクションの中から9曲を唄っています。一人2曲ずつリードヴォーカルを担当し、4人で交互に唄う曲が1曲あり、ブズーキやハーモニウム、バンジョー、サックスなどを駆使した演奏はさながらBandoggsやMuckram Wakesを想わせます。
Amy Leach & Alasdair Paul『Six Sangs』Self-released, 29 February 2024
エディンバラ出身のシンガー、エイミー・リーチとハイランド出身のギタリスト、アラスデア・ポールによるデュオ1作目のEPです。スコットランドのトラヴェラー、スタンリー・ロバートソンの歌唱から学んだ〈Moorlough Maggie〉やかつてタンジェント盤『The Muckle Sangs』に収められていたベッツィ・ジョンソンによるタムリンのスコットランドヴァージョン〈Lady Margaret〉などタイトルどおり全6曲。その中で〈Jamie Foyers〉はイワン・マッコールがスコットランドのトラッド〈Young Jamie Foyers〉の第1節を残し、舞台を半島戦争からスペイン内戦に移して書き換えたもの。国際旅団の義勇兵としてフランコのファシスト陣営と戦い戦死したクライド川の造船労働者ジェイミー・フォイヤーズを唄っています。この地球上に一人のファシストも残すなと唄う最後の一行が印象的ですが、ディック・ゴーハンやドロレス・ケーン&ジョン・フォークナーの名唱もあるのでご存じの方も多いのでは。ここでエイミーはイワンの歌詞をシーラ・スチュワートの唄った伝統的なオリジナルのメロディで唄っています。若いながらもスコットランドの伝統への気概がヒシヒシと伝わる一枚です。
ご来店の際にリクエストしてください。
5月26日(日)は都合により11時00分からの営業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。
5月12日(日)は都合により11時00分からの営業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。
先日来店いただいた船津さんのCDショップ、タムボリンさんから注文していたCDが届きました。デヴィッド・ウィフェン『Timeless Songs』、ガスリー・トーマス『Live On Stage』、ジャック・ハーディ『Live on Stage In Italy』の3枚で、どれもイタリアの新興レーベルNew Shot Recordsが昨年から今年にかけてリリースした未発表のライヴ音源です。
David Wiffen『Timeless Songs - Unreleased Stage & Studio Recordings 1974/93』New Shot Records, 2024
CBCやCTV/CJOHの放送用に録られた3つのセッションから2~5曲ずつ収録したもの。全11曲中〈Coast To Coast Fever〉と〈More Often Than Not〉は何れのセッションでも演奏されているので3ヴァージョン聴くことができ、〈Driving Wheel〉は74年のもののみ収録されています。全てバンド付きで、特に93年のうちの一つにはマレー・マクロクランがピアノで参加しています。いつの時代も変わらぬヒューマンな歌声が堪能できます。
Guthrie Thomas『Live On Stage』New Shot Records, 2023
1993年4月15日北イタリアはセスト・カレンデのライヴ録音。遡ること10年、1983年にイタリア盤『Like No Other』リリースに出資した現在のニュー・ショットのオーナーたちは大きな負債を抱えてしまいます。恐縮していたガスリーはイタリアツアー終了後ギターにボー・ラムゼイ、ハーモニカとアコーディオンにデイヴ・ムーアを迎え、リズム・セクションは後からダビングするというレコーディングを企画しましたが、自身の酷い泥酔のため計画は破綻。代替策として許諾されていたのがこのライヴ音源のリリースで、30年の時を経、やっと日の目を見ました。全11曲はすべて弾き語り、超名盤『La Belle Poisoneuse』をもう少しリラックスさせたような仕上がりです。
Jack Hardy『Live on Stage In Italy』New Shot Records, 2023
ジャック・ハーディは1993年11月23日イタリアのカプリーノ・ヴェロネーゼでのライヴ録音。こちらには確りとバックバンドが付きます。随所でスリリングなドブロ演奏を聴かせるデヴィッド・ハンバーガーとのちに9.11テロの犠牲になってしまうベースのジェフ・ハーディがバックアップし、Fast Folk同人のウェンディ・ベッカーマンが素敵な歌声でジャックに寄り添います。全17曲、80分におよぶライヴ・パフォーマンスは圧巻です。
ニュー・ショットのラインナップにはこの他にもEddie Hinton、Danny O'Keefe、Tom Russellなどのイタリアでのライヴ音源が続々。船津さん曰くお宝はまだまだあるとのこと。これからが頼もしいレーベルです。
ご来店の際にリクエストしてください。