Vinyl and so on

The Christmas Jug Band『Mistletoe Jam』Globe Records, 1987
1987年にダン・ヒックスが中心になってリリースしたクリスマス・アルバム。メンバーは元エッグズ・オーヴァー・イージーのオースティン・デローンとエッグズ2nd『Fear Of Frying』でドラムを叩いていたグレッグ・デューイ、さらにはゲスト参加のブライエン・ホプキンスと、3人のエッグズ・メンバーが名を連ね、ムーンライターズではデローンとバンドメイトだったティム・エシュリマンも参加しています。またトラモナ店主推薦のポートランドはフリーク・マウンテン・ランブラーズのギタリスト、タートル・ヴァンダーマーも。アルバムの要所要所でご機嫌なギターを聴かせてくれます。
ダン・ヒックスの唄う〈Santa Claus Is Coming To Town〉で始まるアルバムは全11曲。〈赤鼻のトナカイ〉を改作したグレッグ・デューイの〈Rudolf, The Bald-Headed Reindeer〉やスタンダード曲〈手紙でも書こう〉をクリスマス・ソングにしたヒックスの〈I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Christmas Card〉、アルバート・キングのブルーズを唄ったデローンの〈Santa Claus Wants Some Lovin'〉などなど。圧巻はタートル・ヴァンダーマーの〈Gee, Rudolf, Ain't I Good To You?〉で、ジェフ・マルダーも顔負けの歌声でクリスマスを楽しく祝っています。赤いレーベルにグリーンのカラー・ヴァイナル、当時珍しかったクリスマス仕様のアルバムに心が躍った記憶があります。
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The Watersons『A Yorkshire Christmas』Witchwood Media, 7 November 2005
1980年12月ラジオのクリスマス番組のためにノース・ヨークシャーのクラットホーン・ホールで録られたライブ音源が2005年にCD化されました。曲の合間に地元ヨークシャーの人々による物語の朗読を挟み、マイク、ラル、ノーマ・ウォータースンとマーティン・カーシーのウォータースンズはデビュー作の『Frost and Fire』から6曲、当時最新作の『Sound, Sound Your Instruments of Joy』から4曲、録音したばかりでまだリリースされていなかった『Green Fields』から1曲の全11曲を渾身のアカペラで唄っています。その中で〈Christmas Is Now Drawing Near at Hand〉はラル・ウォータースンがソロで唄う楽曲ですが、この曲はベネフィット・アルバム『A Very Special Christmas』にスティーヴ・ウィンウッドのヴァージョンもあり、スティーヴはトラフィックの〈John Barleycorn〉と同様に『Frost and Fire』からラルの歌声をお手本に唄っているとか。聴き較べるのも一興ですね。
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The Albion Band『A Christmas Present from The Albion Band』Fun Records, December 1985
アルビオン・バンドのクリスマス・アルバム。ダグ・モーターのギターが心地よい〈In the Bleak Midwinter〉で始まるアルバムは全16曲。〈Shepherds Arise〉〈Somerset Wassail〉などお馴染みのトラッド曲と並んでロビー・ロバートソン作〈Christmas Must Be Tonight〉が。その素晴らしい出来映えは評判の芳しくなかったThe Band『Islands』を聴き直す切っ掛けになり、今ではクリスマス・ソングの隠れた定番になった感もあります。曲間のチャールズ・ディケンズやトマス・ハーディなどの朗読はいかにもアシュリーらしく、オリジナル・メンバーがアシュリーひとりになってしまったバンドのアルビオンらしさを担保しています。注目の女性ヴォーカルはキャシー・ルサーフ。今も続くアルビオン・クリスマス・バンドの先駆けとなったアルバムです。
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Alela Diane & The Hackles『It's Always Christmas Somewhere』Rusted Blue Records, 2023
マイケル・ハーレーのバックアップで気を吐いたハックルズがSSWのアリーラ・ダイアンとレコーディングしたクリスマス・アルバム。〈Silent Night〉〈Blue Christmas〉〈One Little Christmas Tree〉など定番のクリスマス・ソングのなかアリーラの代表曲〈The Pirate's Gospel〉が〈The Santa's Gospel〉として唄われ、昨今クリスマス・ソングのスタンダードとして定着しつつあるジョニ・ミッチェルの〈River〉も採りあげられています。トラッド関連では〈God Rest Ye Merry Gentlemen〉と〈Good King Wenceslas〉が。どちらも1986年のグリニッジヴィレッジ盤『Yuletracks』とかぶる楽曲で、そこではジョン・カークやスー・ハリスの伴奏でマーティン・カーシーとマーティン・ウィンダム・リードが唄っていました。もしここら辺りが彼らのソース音源だとすると嬉しいかぎりですね。録音はオレゴン州アストリアのロープ・ルーム。レコーディングのために練習をしていた季節はずれのクリスマス・ソングを聴いてハックルズのルークとカティのお嬢さんが発した言葉がそのままアルバムタイトルになったとか。アコースティックで穏やかな名盤です。
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Eliza Carthy & Jon Boden『Glad Christmas Comes』Hudson Records, 1 December 2023
イライザ・カーシーとジョン・ボーデンの新作クリスマスアルバムがやっと届きました。真っ先に針を落としたのがポーグスの〈Fairytale Of New York〉。イライザのフィドルとジョンのコンサティーナで唄われ、前奏や間奏ではユアン・ウォードロップによるモリスダンスがフィーチャーされています。そのザックザックと地を這うようなジグのリズムがこの11月に亡くなったシェイン・マガウアンの魂を鎮めるかのように響き、いかにもイングランドのふたりらしいアレンジで今となってはもう聴けないマガウアン&マッコールを唄いきっています。今年唄われるべくして唄われたクリスマスソングではないでしょうか。
他に生前のノーマ・ウォータソンに収録を薦められたジーン・リッチーの7分に及ぶ〈Wintergrace 〉やエミリー・ポートマンとティム・ヴァン・エイケンのコーラスが素晴らしい〈Beautiful Star〉と〈Remember O Thou Man〉、ヨークシャーのバックステージ・ブラスがニューオリンズの雰囲気を醸す〈I Want a Hippopotamus for Christmas〉など聴きどころ満載のクリスマスアルバムです。
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