Vinyl and so on

brand new arrival
2024-04-26 14:07:23
Jeb Loy Nichols & Jennifer Carr『Shadow On The Day』
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Jeb Loy Nichols & Jennifer Carr『Shadow On The Day』Self-released, 2024

 

ジェブ・ロイ・ニコルズの新作はセカンドアルバム『Just What Time It Is』からジェブ・ロイのレコーディングに参加しているジェニファー・カーとの共演盤。ジェニファーがピアノを弾き、ジェブ・ロイが唄います。フェロウ・トラヴェラーズ時代の〈Bright Morning Star〉やウェストウッド・オールスターズとの録音が記憶に新しい〈Remember the Season〉など長いキャリアから10曲が採りあげられ再演されています。ジェブ・ロイとジェニファーの他はお馴染みのアンディ・ハミルのベースと、数曲でクロヴィス・フィリップスのギターやノスタルジア77・オクテットのロス・スタンリーが弾くハモンドが付くのみ。2021年に亡くなったもう一人の盟友ウェイン・ヌネスに捧げられた穏やかなアルバムです。

 

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2024-03-23 12:38:31
マーティン・ウィンダム=リード『Harry the Hawker Is Dead』
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Martyn Wyndham-Read『Harry the Hawker Is Dead』Argo, 1973

 

1973年アーゴからリリースされたマーティン・ウィンダム=リードの英国における3枚目のソロアルバムです。ご承知のとおりマーティンはオーストラリア時代にソロアルバム『Australian Songs』(1966)をW&Gレーベルからリリースしているので、トレイラーの2枚のソロ作『Ned Kelly and That Gang』(1970)、『Martyn Wyndham-Read』(1971)に続く本作は通算では4枚目のソロアルバムになります。

 

バックミュージシャンのクレジットはありませんが、ニック・ジョーンズ(フィドル)、デイヴ・ブランド(バンジョー、コンサティーナ)、ヴィン・ガーバット(ホイッスル)が参加している模様。のちに代表曲〈Valley of Tees〉がマーティンによって唄われるヴィン・ガーバットの参加は貴重です。

 

タイトル曲の〈Harry the Hawker Is Dead〉はマーティンには欠くことのできないソングライター、マーティン・グレイブの初期の作品。行商のハリー爺さんが亡くなったため針とピンやブーツフックと靴紐など日用品だけでなく笑顔やうたも齎されなくなってしまったとマーティンはアカペラで唄っています。また〈Sailor Home From the Sea〉はオーストラリアのフェミニスト詩人ドロシー・ヒューイットの詩にマーティンが曲を付けたもの。久々に帰ってくる船乗りの夫に書いたラヴソングで、後年『A Rose From the Bush』(1984、別タイトル〈Cock of the North〉で)と『Beneath a Southern Sky』(1997)の2回にわたって再録するほどのお気に入りです。

 

極めつけはディランも1992年のオーストラリア公演で唄った〈The Female Rambling Sailor〉。もともとはブロードサイド起源のバラッドで、航海に出た恋人を追いかけ男装をして船に乗り込む女性の物語です。唯一残されている口頭伝承はオーストラリアはクイーンズランド州のキャサリン・ピーティが唄ったフィールドレコーディングのみ。マーティンはその夫人の歌唱から学んだとのことです。ディランはカナダのフォークシンガー、イアン・ロブのヴァージョンをお手本にしたようで、マーティンの歌唱に感銘したイアンがオーストラリア・ヴァージョンにある歌詞の欠落を自身で補いフォークレガシーFolk-Legacyに吹き込みました。ディランはイアンの歌詞で唄い、ディランが唄ったヴァージョンのオリジナルが無伴奏のマーティンで聴けることになります。

 

他にオーストラリア起源の〈Bluey Brink〉や〈Lachlan Tigers〉など全12曲。マーティンのキャリアの中ではあまり話題にならないアルバムですが、このアーゴ盤、滋味あふれる歌声が堪能できる隠れた名盤です。

 

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2024-03-09 15:59:04
『Live From Bristol』『Lady of the Lake』
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Nora Brown with Sarah Kate Morgan『Live From Bristol』Jalopy Records, 2023

Nora Brown and Stephanie Coleman『Lady of the Lake』Jalopy Records, 2023

 

ノラ・ブラウン、2023年の仕事です。

1枚はサラ・ケイト・モーガンとリリースした7インチ『Live From Bristol』。A面の〈Down in the Willow Garden〉はマーダーバラッド、B面〈Waynesboro〉はインストで、サラ・ケイトはマンウンテンダルシマーとコーラスでノラをサポートしています。

 

もう1枚の『Lady of the Lake』はフィドルのステファニー・コールマンとコラボした10インチ。ステファニーとのレコーディングは2019年のデビュー作『Cinnamon Tree』以来。そのステファニーは現在アンクルアールのメンバーとのこと、気づきませんでした。4曲中タイトル曲の〈Lady of the Lake〉と〈Twin Sisters〉がインストで、〈Gone So Long〉と〈Copper Kettle〉が唄もの。インストではステファニーが、唄ものではノラがイニシアティブをとっているようで、ディランも唄った〈Copper Kettle〉での益々渋くなったノラの歌声が聴きどころです。

 

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2024-01-22 18:48:13
Cyril Tawney, Matt McGinn, Johnny Handle, Alasdair Clayre『A Cold Wind Blows』
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Cyril Tawney, Matt McGinn, Johnny Handle, Alasdair Clayre『A Cold Wind Blows - Songs in traditional styles composed and sung by』Elektra, 1966

 

1965年ディランのニューポートに立ち会ったジョー・ボイドは再度イギリスを訪れ、ご承知のとおりピンク・フロイドのデビューシングルをプロデュースしたり、フェアポート・コンヴェンションやニック・ドレイク、インクレディブル・ストリング・バンドなど英国のロック史には欠くことのできないミュージシャンを数多く見い出します。本作はそのボイドがエレクトラのためにエリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッド、ジャック・ブルースらを集めたパワーハウス・セッションのリハーサルとレコーディングの合間に録った初プロデュース作品です。

 

副題にあるようにトラッドのスタイルで曲作りをし唄う4人のフォーク・シンガー、シリル・タウニー、マット・マッギン、ジョニー・ハンドル、 アラスデア・クレアの歌声を収録したアンソロジーで、録音は1966年1月にエジンバラ(マッギン)、ニューカッスル(ハンドル)、ロンドン(クレア)の3箇所で行われ、シリル・タウニーだけ4月のロンドンで録られています。

 

ボイド自身は個人的なお気に入りとしてジョニー・ハンドルの〈Because It Wouldn't Pay〉をコンピレーション『ジョー・ボイドの仕事』に収録していますが、圧倒的に素晴らしいのがシリル・タウニーの無伴奏で唄われる〈Five Foot Flirt〉〈On a Monday Morning〉〈Sammy's Bar〉〈The Oggie Man〉の4曲。どの曲も後に様々のシンガーにカヴァーされていますが、なかでも月曜の朝の憂鬱を唄った〈On a Monday Morning〉は古くはピーター・ベラミーやマーティン・カーシー、ルイス・キレン、ニック・ジョーンズなどに唄われ、数多くの名唱を生んでいます。ジョニー・ハンドルのハイ・レベル・ランターズはもう一人のシンガー、トム・ギルフェロンがノーサンブリアン・パイプのドローンをバックに唄い、レイチェルとベッキーのアンサンク姉妹はピアノの伴奏で唄っていました。最近では昨年のベストアルバムの誉れの高いランカムの『False Lankum』でも唄われていたのが記憶に新しいところです。そんな誰からも愛された名曲の初出が聴けるのもこのアルバムの魅力ではないでしょうか。

 

ちなみにアラスデア・クレアのセッションではペギー・シーガーがバンジョーやダルシマーなどでサポートし、うち1曲にはマーティン・カーシーもギターで参加しています。またジャケットの写真はボイドとUFOクラブを一緒に立ち上げたジョン・ホプキンスが担当しています。

 

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2024-01-21 16:53:44
Nick Hart & Tom Moore『The Colour of Amber』
Nick Hart & Tom Moore『The Colour of Amber』

Nick Hart & Tom Moore『The Colour of Amber』Slow Worm Records, 22 November 2023

 

昨年リリースされたニック・ハートの最新作が届きました。『Nick Hart Sings Eight English Folk Songs』を振出しに『Nine』『Ten』と続いたシングス・イングリッシュ・フォークソング・シリーズは小休止。1枚目からずっとニックをサポートをしてきたMoore Moss Rutterのトム・ムーアとの共演盤です。今回はお馴染みのギター弾き語りは封印し、自身の弾くヴィオラ・ダ・ガンバとトムのヴィオラ、そして後からダビングされたハーモニウムのドローンで唄っています。

 

クラシカルな演奏にのせて唄われるのはジョン・カークパトリックがブラスモンキーで唄った〈The Jolly Bold Robber〉やマーティン・カーシーの〈Three Jolly Sneaksmen〉などトラッドが6曲。いずれもゆったりとしたテンポで唄われ、穏やかな歌声には温かみが溢れています。最後の〈Bold Riley〉は『A Sailor’s Garland』におけるA・L・ロイドの歌唱が初出のシーシャンティ。元ラムズ・ボトムのキース・ケンドリックに多くを負っているとライナーには記されていますが、むしろケイト・ラスビーのヴァージョンを想いおこす方が多いのでは。揚帆作業で唄われるハリヤードをニックはテンポを落とし、まるでエレジーのように唄っています。

 

またトムのヴィオラをフューチャーしたインスト4曲も素晴らしく、〈Swaggering Boney〉〈Constant Billy〉など モリス・チューンやジョン・プレイフォードのダンシング・マスターから〈The Child Grove〉のカントリー・ダンス・チューンが、ヴィオラとヴィオラ・ダ・ガンバのイナたくも優雅な演奏で堪能できます。そして〈Flowers of Edinburgh〉はプラントライフの名アンソロジー『English Melodeon Players』(1986)からトニー・ホールの演奏をお手本にしたもの。母親の胎内にいるときからトニーのメロディオンを聴かされていたトムにとってトニーの音楽は今でも根強いお気に入りだとか。唄も演奏も良し。鮮やかさが際立った、昨年聴いた中でも指折りのアルバムです。

 

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ちなみに『English Melodeon Players』にはトニー・ホールのほかロッド・ストラドリング、ロジャー・ワトソン、デイヴ・ロバーツなどの素晴らしい演奏が収められていますが、同レーベルには『English Fiddle Players』と云うアルバムもあり、どちらも必聴です。

 

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