Vinyl and so on

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2022-09-24 17:17:53
Bryony Griffith & Alice Jones『A Year Too Late and a Month Too Soon - Songs from Yorkshire』
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Bryony Griffith & Alice Jones『A Year Too Late and a Month Too Soon - Songs from Yorkshire』(Splid Records, 2022)

 

ブライオニー・グリフィスはかつてフェイ・ヒールドらと無伴奏コーラス・グループのザ・ウィッチズ・オブ・エルスウィックを組んだり、ディーモン・バーバーズというかなりカッコ良いエレクトリック・トラッド・バンドでフィドルを弾き唄っていました。アシュリー・ハッチングスの『Great Grandson of Morris On』にも参加していたのでご存じの方もいらっしゃるのでは。かたやアリス・ジョーンズもピート・コーの諸作に参加し、2014年のフランク・キッドソンを唄ったデュオ名義の『The Search for Five Finger Frank』は今も高く評価されています。またソロ作『Poor Strange Girl』もある知る人ぞ知るフォーク・ミュージシャンです。

 

二人ともヨークシャーの出身で、本作はパンデミックのなかキッドソンなど地元の収集家のコレクションや出版物、ヨークシャーの先達による音源など地元の伝統を深く掘り下げ、録音したヨークシャーのトラッド集。プロデュースはジョー・ラスビー。ブライオニーのフィドルとアリスのハーモニウム若しくはテナー・ギターのみで唄われ、ふたりの歌声が主役のシンプルなアルバムは、往年のトピックやトレイラーの名盤を想わせます。

 

そのトピック盤ではフランク・ヒンクリフの『In Sheffield Park』から〈Edward 〉が〈What Is That Blood on Thy Shirt Sleeve?〉として、ハリー・ボードマンとデイヴ・ヒラリーの『Trans Pennine』からデイヴの〈Nellie o' Bob's o' t' Crowtrees〉が唄われているのが嬉しいところ。またウォータースンズの『A Yorkshire Garland』からは〈Strawberry Tower〉と〈Willy Went To Westerdale〉がノース・ヨークシャーの農民でシンガーのジョン・グリーヴズから習ったヴァージョンで唄われています。

 

かつてオールド・スワン・バンドと肩を並べたイングリッシュ・カントリー・ダンス・バンド、ラムズ・ボトムのメンバーだったキース・ケンドリックは、リヴィング・トラディション誌のディスク・レヴューで今年のベストどころかここ10年でも指折りのアルバムと絶賛しています。必聴です。

 

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2022-09-14 15:30:55
Kim Carnie『And So We Gather』
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Kim Carnie『And So We Gather』(Càrn CÀRN001, 17 June 2022)

 

キム・カーニーはスコットランドの女性ゲーリック・シンガーで、まだ20代と思われます。自作も能くし、アルバムには英語で書かれた自作曲4曲に、ゲール語のトラッドなど6曲(1曲はゲール語詩にキムが曲を付けたもの)が2曲ずつ挟まれるように収録されています。

 

プロデュースはカパーケリーのドナルド・ショウ。ハープやフィドル(1曲ありますが)などトラディショナル色の強い楽器を排除し、ピアノやダブル・ベースを中心に据え、必要に応じてサックスやコラ(!!)なども配置した演奏が奏功し、ケイト・ラズビーをもう少しさらっとしたようなキムの歌声を際立てています。さらに自作の英語曲〈And So We Gather〉や〈Loving You〉ではケイト・セント・ジョン編曲のストリングスと相俟ってサンディ・デニーの『Like an Old Fashioned Waltz』を彷彿させたりもします。

 

カレン・マシスンやジュリー・ファウリスも参加。そのジュリーやカリン・ポルワートのようなスコットランドを代表する女性シンガーに将来化けるポテンシャルを持ったデビュー・アルバムです。

 

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2022-05-15 11:13:05
『Life and the Land』『Needle and Thread』
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04. Ben Walker & Kirsty Merryn『Life and the Land』(Folkroom Records, 2021)

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カースティ・メリンはロンドンを拠点に活躍する女性SSW。既に2枚のフル・アルバムもあり、ショウ・オブ・ハンズのサポート・メンバーとしても知られています。本作はジョシエンヌ・クラークとのコンビを解消したギターの名手ベン・ウォーカーがそのカースティ・メリンと組んでリリースしたEPです。ボーナストラックの〈The Farmer's Toast〉を含め全6曲。トラッドの他にラル&マイク・ウォータソンの〈Scarecrow〉やロバート・バーンズの〈Westlin Winds〉も。かつてウォーターソンズやオークも唄った〈Jolly Ploughboy〉ではカースティのピアノ弾き語りにベンのスライド・ギターが絡むこのふたりならではのアプローチも聴けます。

 

05. Dom Prag『Needle and Thread』(Self Released, 2022)

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ドム・プラグはサウサンプトン出身のシンガー・ソングライター兼ギタリスト。元々クラシック・ギターを学んでいたことからナイロン弦を張ったギターの弾き語りが彼の持ち味になっています。19世紀末にダラムの炭鉱地帯で活躍した労働者階級のソングライター、トミー・アームストロングの〈South Medomsley Strike〉と〈Oakey Strike Eviction〉を挟んで前半にトラッドを4曲、後半に自作曲4曲を配した選曲はかなり意図的。ショウ・オブ・ハンズのフィル・ビーアがプロデュースし、ワイルダネス・イェットのローワンとロージーがフィドルとコーラスで参加した本作はドムの2ndにして最新のアルバムです。

 

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2022-03-20 17:21:09
『The Poor Shall Wear the Crown』『Yonder Green Grove』『A Lancashire Grace』
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英国のトラッドやフォークはまだまだCDが主流のようで良いものにCDが多いようです。最近届いた新作をご紹介します。

01. Nancy Kerr『The Poor Shall Wear the Crown – Songs by Leon Rosselson』(Little Dish Records, 2021)

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ナンシー・カーの新作はコロナ禍の20年5月毎日レオン・ロッセルソンの楽曲を唄って動画を投稿するというプロジェクトのCD化。ネットには33曲がアップされていますが、CDにはシェフィールドのスタジオでマグパイ・アークのトム・A・ライトによって録り直された12曲が収録されています。全曲ギター、フィドル、ビオラ、ピアノの弾き語りで、〈Why Does It Have to Be Me?〉でのみ息子さんのハリー君とのデュエットが聴けます。ロッセルソンは勿論のこと、サンドラ・カー、フランキー・アームストロング、故ロイ・ベイリーに捧げられています。

 

02. The Norfolk Broads『Yonder Green Grove』(Self Released, 2021)

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ハリー・コックスやサム・ラーナー、更にはピーター・ベラミーを輩出した英国のノーフォークはトラディショナル・ミュージックの宝庫。そのノーフォークをグループ名に冠したノーフォーク・ブローズはロンドンのトラッド・アカデミー・シー・シャンティ・クワイアの女性メンバー4人で結成された無伴奏コーラスのグループです。特に出身などノーフォークとの直接的な関係はなかったようですが、この2ndアルバムにしてやっとノーフォークでの録音が実現しました。全曲トラッド。なかでも〈Fear a Bhata〉はフェアポート加入前のサンディ・デニーも唄っていたスコッツ・ゲーリック・ソング。サンディ同様リフレインをゲール語で唄っています。アルバムは基本アカペラですが、数曲で聴けるニック・ハートのギターとトム・ムーアのフィドルなどによる抑制の効いたバックアップも聴き逃せません。

 

03. The Oldham Tinkers『A Lancashire Grace』(Limefield Records, 2021)

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トピック・レコードの80周年記念アルバム『Vision & Revision』における〈Dirty Old Town〉が素晴らしかったオールダム・ティンカーズ。この企画だけのものと思っていたら42年振りの新作がリリースされました。メンバーのうちジェリー・カーンズ(唄、ギター)とジョン・ハワース(唄、バンジョーほか)の二人は健在ですが、ラリー・カーンズが2016年に73歳で亡くなってしまいました。その後継に加入したマンドリンのデイヴ・ハワードは元々レコーディング・エンジニアで、本作もランカシャーのバリーにある所有のスタジオでデイヴによって録音されています。スペイン内戦で国際旅団としてオールダムから参戦した10名を唄った〈Ten Oldham Men (No Pasaran)〉を始め、自作曲の〈Alphin〉やランカシャーの詩人エドウィン・ウォーの詩に曲を付けた〈Cradle Song〉など13曲を気負うことなく平明に唄うのはこれまで通り。『For Old Time's Sake』同様”枯淡なペーソス”が湧き上がる名作です。

 

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2021-11-19 21:56:50
『Hourglass』『Still As Your Sleeping』『Fallow Ground』
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いつも良質の音楽を届けてくれる大分のCD通販ショップ、タムボリンさん。久々の通販リストから購入した新譜です。

 

Murray McLauchlan / Hourglass(True North Records, 2021)

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76年の来日公演に前後してロック・バンドを結成し私たちの聴きたい音から少しずつ離れていったマレー・マクロクラン、久々のコレクションです。ペダル・スティールを中心とした抑制の効いたバンド演奏が齢を重ね幾分渋みを増した歌声を際立て穏やかに響きます。そしてパンデミックの中で書かれた唄の数々は、ミネアポリスのジョージ・フロイドに捧げられた〈I Live On A White Cloud (For George Floyd)〉や地中海で溺死した3歳のシリア難民、アラン・クルディについて唄った〈Lying By The Sea (For Alan Kurdi)〉などメッセージ性の強いものばかり。声高に唄われるだけがプロテスト・ソングのすべてではないと云う証しでしょう。

 

Karine Polwart & Dave Milligan / Still As Your Sleeping(Hudson Records, 2021)

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先の『Karine Polwart's Scottish Songbook』はカリンらしい選曲の好盤でした。その前作から早2年、コロナ禍でのカリン・ポルワートの新作はご近所のジャズ・ピアニスト、デイヴ・ミリガンと二人だけのアルバム。〈Craigie Hill〉〈The Parting Glass 〉などトラッドや自作曲のほか、リチャード・ファリーニャの〈The Quiet Joys of Brotherhood〉やケイト・マクギャリグルの〈Talk to Me of Mendocino〉も唄われていますが、ひとつの歌声とひとつのピアノが穏やかに共鳴し、唯一無二の世界を作っています。抗いようのない傑作です。

 

Spiers & Boden / Fallow Ground(Hudson Records, 2021)

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前作の『Vagabond』から13年、結成10周年を記念してリリースされた企画ものの『The Works』からでも10年。やっとSpiers & Bodenが帰ってきました。ベロウヘッドの諸作やソロ作も良いのですが、やはりこの二人はメローディオンとフィドルの二人だけのフォーマットがいちばん。最高です。トレヴァー・ルーカスも唄っていたオーストラリアのトラッド〈Bluey Brink〉で始まるアルバムは唄もの6曲、インスト7曲の全13曲。極めつけはかつてアーチー・フィッシャーやレイ・フィッシャーも取り上げていたグレアム・マイルズの〈Yonder Banks〉。渋すぎる選曲には脱帽です。

 

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