Vinyl and so on

arrival
2023-05-18 00:34:35
『It's More In My Body Than In My Mind』『Something About Dreaming』
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Ralph E. White『It's More In My Body Than In My Mind』Worried Songs, May 29, 2022

Ralph E. White『Something About Dreaming』Worried Songs, August 26, 2022

 

パンチ・ブラザースの例を持ち出すまでもなく、ビル・モンローの古からブルーグラスはいつもプログレッシブでした。ラルフ・ホワイトは90年代にオースティンに現れたパンキッシュなブルーグラス・バンド、バッド・リヴァーズのフィドル奏者。バンド脱退後にはマイケル・ハーレーのツアーにも同行し、ソロ活動の傍らエイミー・アネルと組んだプレシャス・ブラッドはトラモナでも注目のデュオでした。

 

そんなラルフが昨年リリースした2枚のアルバムはコロナ禍前の2020年3月オースティンにあるドン・セント所有のスタジオ、セントーンでジェリー・デイヴィッド・デシッカのプロデュースにより2日間で録られています。全篇バンジョー、エレクトリック・ギター、ボタン・アコーディオン、フィドル、カリンバによる弾き語り。なかでもカリンバで唄われるマール・ハガードの〈Lonesome Fugitive〉は絶品。オーセンティックでありながらもアヴァンギャルドなラルフならではの世界が堪能できます。

 

なおプロデューサーのジェリー・デイヴィッド・デシッカはジェブ・ロイ・ニコルズのアメリカの友人。ラリー・ジョン・ウィルソンやウィル・ビーリーの復活作も手掛けていますが、近々には遺作になってしまったボブ・マーティンの最新作もWorried Songsから予定されています。

 

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2023-05-15 17:36:31
George Sansome & Matt Quinn『Sheffield Park』Grimdon Records, 28 April 2023
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ジョージの弾くギターとマットのマンドリン、そして二人の歌声で出来上がったアルバムです。グラニーズ・アティックのジョージ・サンサムとダヴテイル・トリオのマット・クイン。それぞれ別のバンドで活躍する新しいシンガーの初顔合わせです。

 

嬉しいのは1曲目の〈Tyne of Harrow〉をジョージが初めて聴いたのはドロレス・キーン&ジョン・フォークナーの『Broken Hearted I'll Wander』で、続く〈Tailor in the Tea Chest〉はバンドックスの『Bandoggs』だったとか。70年代の名盤からの選曲は往年のファンの心をくすぐります。そしてアカペラで歌われる〈I Live Not Where I Love〉は極めつけ。特にジョージとマットはコメントしていませんが、サイモン・ニコルの『Before Your Time…』で客演したリンダ・トンプソンが忘れられません。歌えなくなったリンダの久々の歌声にどれだけ感動したことか。他にもアンディ・アーヴァインの〈My Son in Amerikay〉やマーティン・カーシーの〈The Death of Andrew〉なども。英国では今もヒューマン・ソングが歌い継がれています。

 

因みにマット・クインはフラワーズ&フロリックスのメロディオン奏者ダン・クインの息子さんです。

 

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2023-05-07 15:05:34
Stephen Stills『Live At Berkeley 1971』Omnivore Recordings, 2023
Stephen Stills『Live At Berkeley 1971』Stephen Stills『Live At Berkeley 1971』Omnivore Recordings, 2023

Stephen Stills『Live At Berkeley 1971』Omnivore Recordings, 2023

 

1971年夏2ndアルバム『Stephen Stills 2』をリリースしたスティーヴン・スティルスは初めてのソロ・ツアーに出ます。メンフィス・ホーンズを伴っていたため「メンフィス・ホーンズ・ツアー」と呼ばれていますが、リタ・クーリッジとの破局によるスティルスの飲酒が酷く「ドランケン・ホーンズ・ツアー」とも云われるそうです。このツアーの音源はこれまでライノのCDBox『Carry On』にマジソン・スクエア・ガーデンでの〈Do For The Other〉が1曲のみ収録されただけで纏まってリリースされるのはこれが初めて。ツアー最終日の8月20、21日のバークレー・コミュニティ・シアターでの公演が収録されています。

 

バンドの面子はメンフィス・ホーンズのほかに歌とギターでフラモックスのスティーヴ・フロムホルツが参加し、ポール・ハリス(オルガン)、ジョー・ララ(パーカッション)、カルヴィン・サミュエルズ(ベース)、ダラス・テイラー(ドラムス)とリズム・セクションはそのままマナサスです。収録曲全14曲中前半10曲がギター、ピアノ、バンジョーの弾き語りを中心にしたアコースティック・セット。〈You Don't Have To Cry〉〈The Lee Shore〉ではゲスト出演のデイヴィッド・クロスビーも加わりフロムホルツと3人でCS&Nさながらのハーモニーを聴かせてくれます。エレクトリック・セットでは10分に及ぶ〈Cherokee〉が白眉。メンフィス・ホーンズの面々とのスリリングなソロの掛け合いはニール・ヤングとのギターバトルを彷彿とさせます。

 

因みにこのツアーでのクリス・ヒルマンとの再会がマナサスに発展したとか。アルバム『マナサス』に収録の〈Jesus Gave Love Away For Free〉は既にここで唄われ、〈Don't Look At My Shadow〉で言及される2万人を集めたLAフォーラムの公演はバークレーの2日前、18日の出来事でした。

 

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2023-04-22 10:59:13
Alasdair Roberts『Grief in the Kitchen and Mirth in the Hall』Drag City, 31 March 2023
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グラスゴーを拠点に活躍するスコットランドのシンガー兼ギタリスト、アラスデア・ロバーツの新作です。ファロウ・コレクティヴなどのプロジェクトやSSWとしての活動のほか、かつてダギー・マクリーンと名作『Caledonia』を残したアラン・ロバーツを父親に持つアラスデアのこと、トラッド・シンガーとしてのキャリアも忘れられません。本作はそんなアラスデアの5枚目のトラッド集。ひとりグラスゴーのスタジオに入り、ギターとピアノで〈Eppie Morrie〉〈The Bonny Moorhen〉など主にスコットランドの古謡を弾き語っています。その中でピアノで唄われる〈Lichtbob Lassie〉はカレン・ダルトンの歌唱で有名な〈Katie Cruel 〉のスコティッシュ・ヴァージョン。リチャード・トンプソンもトピックの80周年記念アルバムで唄っていました。

 

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2023-04-22 10:54:57
Lisa O'Neill『All of This Is Chance』Rough Trade, 10 February 2023
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BBCドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』でのディラン・カヴァーが記憶に新しい リサ・オニールの新作です。前作はトラッドと自作曲が半々の傑作でしたが、今回はパトリック・カヴァナの長編詩〈The Great Hunger〉へのレスポンスとして書いたタイトル曲やトニー・マクマホンのインタビューにインスパイアされた〈Old Note〉など全8曲すべてがオリジナル。コーマック・ベグリーのコンサーティーナや荘厳なオーケストラによる通奏低音をバックに唄われる硬質な歌声は更なる高みに達したようです。

 

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