Vinyl and so on

arrival
2020-07-31 12:23:17
The Unthanks / Live and Unaccompanied : Diversions Vol. 5(2020)
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ジ・アンサンクスはイングランドは北東端のノーサンバーランドでリヴァイヴァリストの両親に育てられたレイチェルとベッキーのアンサンク姉妹を中心とした5人組で、既に6枚のオリジナル・アルバムと4枚のDiversions Seriesをリリースしています。そのディヴァージョンズ・シリーズ(寄り道シリーズ?)でロバート・ワイアットやアントニー&ザ・ジョンソンズ、 モリー・ ドレイク(ニックの母親です)の楽曲を取り上げ彼らに敬意を表したり、スティングのアルバムに参加するなど、フォーク・ミュージックのカテゴリーに収まらない活躍ぶりです。 

 

本作はディヴァージョンズ・シリーズの5作目で、この5月にリリースされた最新作。いつもは姉妹にプロデューサーでピアニストのエイドリアン・マクナリー、ベースとギターのクリス・プライス、ヴァイオリンのニオファ・キーガンを加えた5人でライブを行うアンサンクスですが、 「Unaccompanied, As We Are」と名付けられた昨年の春のツアーは少し異なっていました。姉妹にニオファを加えた女声トリオのみによる無伴奏ツアーで、英国とアイルランドの31か所を巡ったなかから選りすぐりの13曲が収められています。 

 

13曲中トラッドは3曲、他にコニー・コンヴァース、デイヴ・ドッヅ、ピーター・ベラミー、ジョニー・ハンドル、モリー・ドレイク、リチャード・ドウソン、グレイム・マイルズなど渋めのソング・ライターの楽曲が並ぶさまは流石アンサンクスと云ったところです。 

 

なかでも〈Magpie〉は秀逸。もともとロック・バンド、レッド・ジャスパーのデイヴ・ドッヅが書いた楽曲で、Jim Mageean & Johnny Collinsが1982年の『Live at Herga!』で取り上げていました。Jim Mageean & Johnny Collinsのジムは姉妹の父親ジョージ・アンサンクとは地元ニューカッスルで伝説的なフォーク・グループ、キーラーズの仲間同士。またニューカッスル大学でフォーク・ミュージックの学位コースを持っていたジムはアンサンクスがトラッドを唄ううえで公私ともに大きな存在であった筈です。 

 

そんなジムがかつて唄った「一羽なら悲しみ、二羽なら喜び。三羽なら娘、四羽なら息子。五羽なら銀で、六羽なら金。七羽ならそれは明かされたことのない秘密」と云う民間に伝わる数え歌をリフレインに持ったこのプログレ・ナンバーを、レイチェルとベッキー、ニオファはミステリアスながらも息の合った歌声でラルとマイクのウォータースン兄妹の〈Fine Horseman〉や〈The Scarecrow〉クラスの準トラッドに仕立てています。 

 

Special Film Editionということでアルバムにはツアーのオン、オフ・ステージを捉えた27分間のドキュメンタリー『As We Go』を収録したDVDが付いています。そのなかでレイチェル、ベッキー、ニオファはオープニング・アクトのティム・ダリングを加えアンコールで唄った〈Love Is Like A River〉でソウルフルなゴスペル・コーラスを披露。色んなことができる人たちなのですね。 

 

A1. One By One – Connie Converse 

A2. Magpie – Dave Dodds 

A3. I'm Weary of Lying Alone – Trad.  

A4. Geordie Wedding Set:  – Trad. (We'll Aal Be Wed in Our Auld Claiths / Hi Canny Man) 

A5. Griesly Bride – John Manifold, Tom Campbell 

A6. Bees (Honeybee – Connie Converse / The Bee-Boy's Song – Kipling, Bellamy) 

 

B1. Guard Yer Man Weel – Johnny Handle, The Unthanks 

B2. Poor Mum – Molly Drake 

B3. Where've Yer Bin Dick – Lea Nicholson 

B4. We Picked Apples in a Graveyard Freshly Mowed – Richard Dawson 

B5. Bread and Roses – James Oppenheim, Mimi Fariña 

B6. Caught in a Storm – Graeme Miles 

B7. Farewell Shanty – Trad. 

 

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久々に聴いたJim Mageean & Johnny Collinsの『Live at Herga!』。〈Magpie〉はB面5曲目で、A面ではスタン・ロジャースの〈Northwest Passage〉を客席と大コーラスしています。

2020-07-22 13:14:18
『From There To Here』『Fire & Fleet』『Natural Invention』
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今月も大分のタムボリンさんからオーダーしていたCDが届きました。どれも素晴らしいのでご紹介します。

 

Jacqui McShee and Kevin Dempsey / From There To Here(2020)

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バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーン亡きあとジャッキー・マクシーがタッグを組んだギタリストは元ダンドー・シャフト、ウィッパースナッパーのケヴィン・デンプシー。ヴァーサタイルなケヴィンのギターがジャッキーの穏やかな歌声にそっと寄り添います。ナット・キング・コールの〈Nature Boy〉で幕をあけ、ジャッキーの唄う感動の〈Lord Franklin〉などトラッド4曲、イェーツの詩に新たに曲を付けた〈Innisfree〉など共作曲5曲の全10曲を収録。トム・ラッシュやジェイムズ・テイラーを想わせるケヴィンの歌声もなかなかです。 

 

June Tabor & Oysterband / Fire & Fleet(2019)

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ジューン・テイバーとオイスター・バンドとのコラボも今回で3作目。昨年秋のツアーに併せて用意されたアルバムで、スタジオ録音は4曲、あとは前回、前々回のツアーからと思われるライブ音源が6曲。そのライブ音源が秀逸。ジョン・ジョーンズのメローディオンの弾き語りで始まる〈The Dark End of the Street〉、客席から笑い声が漏れるビル・ステインズ作〈Roseville Fair〉はレス・バーカー・ヴァージョン、前作でシングル・カットされたジョイ・ディヴィジョンの〈Love Will Tear Us Apart〉、ジーニー・ロバートソンの歌唱から学んだという〈When I Was Noo But Sweet Sixteen〉、そして圧巻のグレース・スリックは〈White Rabbit〉、の流れは凄いです。

 

Peter Knight's Gigspanner Big Band / Natural Invention(2020)

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通常はPeter Knight's Gigspannerで活動している元スティーライ・スパンのピーター・ナイト。ハンナ・マーティンとフィリップ・ヘンリーのエッジラークスと組んだ時はビック・バンドを名乗りますが、前回がライヴ盤だったので初めてのスタジオ録音。更に今回はメローディオンに元ベロウヘッド、スピアーズ&ボーデンのジョン・スピアーズも加わりパワー・アップしています。ピーターのフィドルを中心にドブロやメローディオンなどを駆使したアンサンブルが素晴らしく、とりわけジョン・スピアーズが適度なイングリッシュネスを醸し、いい仕事をしています。もちろんハンナ・マーティンの低く抑えの効いたヴォーカルも良く、ニック・ジョーンズの〈Courting Is a Pleasure〉を唄っています。

 

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2020-07-05 18:36:48
『On Clay Hill』『Good Times Older』
『On Clay Hill』『Good Times Older』

3月のおすすめレコードでご紹介した『English Folk Field Recordings』のリリースで英国に於いて最も信頼にたる新興レーベル、フロム・ヒア・レコーズからその『EFFR』に参加していた2組のシンガーたちのCDが届きました。

 

Belinda Kempster & Fran Foote / On Clay Hill(2019)

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ベリンダ・ケンプスターは60年代にトラッドを唄い始めたシンガー。エセックス出身で叔父が1973年のトピック盤『Flash Company』で〈John Barleycorn〉と〈Hares on the Mountain/The Knife in the Window〉を唄ったアーネスト・オースティン。愛娘のフラン・フートはフロム・ヒア・レコーズを主宰するイアン・カーターのバンド、スティック・イン・ザ・ホィールの一員でもあるシンガーです。本作はベリンダとフラン母娘の初共演アルバムで、数曲でシュルティ・ボックスが鳴るほかは全くの無伴奏。アーネストから習った〈John Barleycorn〉のエセックス・ヴァージョンで幕をあけ、最後はアーネスト本人の歌声が聴ける〈Ernie's Song〉で終わる粋な構成の本作はエセックスのシンギング・ファミリーの伝統が記録された名盤です。

 

Jack Sharp / Good Times Older(2020)

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『EFFR』だけでなく、シャーリー・コリンズのトリビュート・アルバム『Shirley Inspired…』にも参加し〈Adieu to Old England〉を唄っていたジャック・シャープ。元々はフェアポート~タル~サバス・タイプ(?)のサイケ・バンド、ウルフ・ピープルのフロント・マンだそうです。初めてのソロ作はオリジナル2曲とインクレディブル・ストリング・バンドのカヴァー1曲を除くほかはすべて出身地であるベッドフォードシャーゆかりのトラッドの弾き語り。もちろんマーティン・カーシーやニック・ジョーンズを追いかける若者のうちの一人ですが抜きん出ていることは間違いありません。

 

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2020-06-24 18:21:42
Brian Wilson & Van Dyke Parks / Orange Crate Art(1995、2020)
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1995年にヴァン・ダイク・パークスがブライアン・ウィルソンと組んでリリースした『Orange Crate Art』が発表25周年を記念して未発表音源を加えアナログ化されました。当時MM誌の「ベスト・アルバム1995」でアメリカ・ロック部門の第1位に輝いた名作で、同年リリースされたブライアンのドキュメンタリー映画『 I Just Wasn't Made For These Times』のサントラ盤と併せて推す選者もいたのを覚えています。

 

当初ヴァン・ダイクはブライアンに共同の曲作りも誘ったようですが、ブライアンはこれを固辞。ヴォーカルとコーラスに専念し、最終的にヴァン・ダイクの作品にブライアンがシンガーとして全面参加する格好になりました。なので先のギャビー・モレノとの『¡Spangled!』は『Orange Crate Art』の第2弾とも云えるのかもしれません。

 

元々の本編12曲を今回アナログ盤2枚組のA面、B面、C面に4曲ずつで収録し、残ったD面には未発表音源3曲が収められています。その3曲が秀逸。ガーシュインの〈Rhapsody In Blue〉と〈Love Is Here To Stay〉、ルイ・アームストロングの〈What A Wonderful World〉で、特に〈What A Wonderful World〉のブライアンの歌声には感動です。

 

また本編の最後がガーシュインの〈Lullaby〉だったこともあり、ガーシュインは本作のキーワード。ヴァン・ダイクのオーケストレーションは、聴くものをガーシュインやコープランドの世界のみならず、ゴットシャルクなど更にその先へと誘ってくれるようです。

 

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2020-06-21 15:14:00
『George Sansome』『Wheels of the World』『Outway Songster』
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数年前その風貌と本格的なトラッド・シンギングのギャップに驚かされたシンガー兼メローディオン奏者にコーエン・ブライスワイト・キルコインがいますが、そのコーエンが在籍するイングランドのトラッド・トリオ、グラニーズ・アティックの昨年出た最新作とコーエンとリード・ヴォーカルを分け合うもう一人のシンガー、ジョージ・サンサムの初ソロ作が到着しました。

 

Granny's Attic / Wheels of the World(2019)

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グラニーズ・アティックはコーエン・ブライスワイト・キルコイン(歌・メローディオン・コンセルティーナ)、ジョージ・サンサム(歌・ギター)、ルイス・ウッド(フィドル)からなるウスターの3人組。既に自主制作のEP『Mind the Gap』(2011) とフル・アルバム『Better Weather』(2014) 、ワイルドグースからリリースされた『Off the Land』(2016) があり、本作は3枚目のフル・アルバムです。

 

全10曲中、3曲あるインストのうち1曲がルイスのオリジナルの他はすべてトラッド。3曲ずつコーエンとジョージがリード・ヴォーカルを分け合い、タイトル曲の〈Wheels of the World〉は二人で交互に唄っています。プロデュースはショーン・レイクマン、スペシャルサンクスにはレイクマン兄弟やキャサリン・ロバーツの他にピート・コー、ミック・ライアン、ニック・ドウの名前が並んでいます。

 

George Sansome / George Sansome(2020)

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もう一人のシンガー、ジョージ・サンサムの初めてのソロ・アルバム。ニック・ジョーンズやイアン・ジャイルズなど同時代の先輩シンガーはもとよりボブ・ハートやジャック・ノリスなどトラディストたちの歌声もお手本にする研究熱心さは頼もしい限り。溌溂とした伸びやかな歌声がクロウズのミック・ライアンを想わせます。プロデュースは売り出し中のベン・ウォーカー。もちろん全曲トラッドでギターの弾き語り。1曲だけダブル・ベースで参加しているトム・ベイリーはトンプソン・ツインズのトムでしょうか。

 

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