Vinyl and so on

arrival
2021-03-09 15:50:53
Tony Rose / Poor Fellows(Dingle's, 1982)
IMG_20210309_150947.jpg

買い逃していたトニー・ローズの4枚目がやっとコレクションできました。トニー・ローズは1970年代から活躍したイングランドのリヴァイヴァリスト。2002年に癌で亡くなるまで4枚のアナログ・レコードと1枚のCDを残し、没後ライヴCDが1枚、遺族によってリリースされています。そして1978年にニック・ジョーンズやピート&クリス・コーと組んだBandoggsはフォークのスーパーグループと云われ、「円熟期の英国トラッド・フォークが到達した一つの理想郷」と評されています。本作はそのバンドックスの活動を挟んで前作から6年ぶりにリリースされた1982年のソロ・アルバムです。

 

これまでトラッド中心に唄ってきたトニーですが、このアルバムでは〈Bonny Light Horseman〉や〈Dark-Eyed Sailor〉などよく知られたビッグ・バラッドに混じってR・トンプスン作〈Down Where the Drunkards Roll〉のような同時代の作家による楽曲がアルバムの半数5曲で取り上げられています。なかでも極めつけはディランの〈Boots of Spanish Leather〉です。

 

1962年の暮れから63年初頭にかけてBBC放送の仕事で渡英したボブ・ディランはロンドンのフォーク・クラブで地元のフォーク・ミュージシャンと親交を深めました。その折、ディランがマーティン・カーシーから教わったトラッド〈Scarborough Fair〉を下敷きに〈Girl from the North Country〉とこの〈Boots of Spanish Leather〉を作ったのは有名な話です。本作でトニーはイングリッシュ・コンサティーナでこの曲を朗々と弾き語っていますが、その歌声に感銘を受けたニック・ジョーンズが自らも〈Boots of Spanish Leather〉を唄い始めたのはあまり知られていません。因みに幾分テンポを落とし、トラッド色を際立たせたニックのヴァージョンはCD『Unearthed』で聴くことができます。

 

反対にニックからトニーへと辿ったのはピーター・ベラミーの〈Us Poor Fellows〉。ベラミーの1977年の代表作、バラッド・オペラの『The Transports』の中で主人公の父親役としてニック・ジョーンズが唄った楽曲ですが、バンドックスのセッションを通してニックから習ったのでしょうか、トニーは本作にカヴァーを収録し、アルバムのタイトルにするほどの入れ込みようです。

 

他にブラウンズの1959年のヒット曲〈The Three Bells〉やポール・ウィルソンの〈Bampton Fair〉も。数曲で聴けるパイワケットのイアン・ブレイクが弾くベースやシンセが時代を感じさせますが、基本的にはギターとコンサティーナの弾き語りアルバムで、ベテラン・リヴァイヴァリストの落ち着いた歌声が味わい深い名盤です。

 

ご来店の際にリクエストしてください。

  

Tracks

Side 1

01. The Yarmouth Tragedy

02. The Bonny Light Horseman

03. Clerk Saunders

04. Down Where the Drunkards Roll

05. The Three Bells (Jimmy Brown)

Side 2

01. The Recruiting Sergeant (Arthur McBride)

02. Boots of Spanish Leather

03. Us Poor Fellows

04. Tom the Barber

05. The Dark-Eyed Sailor

06. Bampton Fair

 

Musicians

Tony Rose: vocals, guitar, English concertina

Ian Blake: bass, synthesiser, bass clarinet, recorders

Mark Emerson: fiddle

Alison and Martin Bloomer, Sean O'Shea, Barry Lister: harmony vocals

2021-01-31 14:26:37
Cohen Braithwaite-Kilcoyne / Rakes & Misfits(2021)
IMG_20210130_133258.jpg

コーエン・ブレイスウェイト・キルコインの新作『Rakes & Misfits』が届きました。

 

コーエン・ブレイスウェイト・キルコインはイングランドのウスターを拠点に活躍するグラニーズ・アティックのメローディオン奏者。2017年の『Outway Songster』に続く2枚目のソロ作です。20年の夏にマグパイ・アークのトム・A・ライトによってスタジオ内でライヴ・レコーディングされた、ダビングなしのメローディオン、コンサーティーナによる弾き語りアルバム。全12曲中、トラッドはピーター・ベラミーが『Both Sides Then』で唄った〈Barbaree〉やフェアポートの〈The Deserter〉の新ヴァージョンを含む8曲、他に自作曲が3曲、最後をウスター出身のコメディエンヌ、ヴェスタ・ティリーのミュージック・ホール・ソング〈From Marble Arch to Leicester Square〉で締め括っています。

 

ジョン・カークパトリックを想わせる溌溂とした歌声がいかにもイングリッシュな一枚で、ジャケットのイラストとデザインはダヴテイル・トリオのロージー・フッドが手掛けています。

 

昨年リリースされたグラニーズ・アティックのギタリスト、ジョージ・サンサムの『George Sansome』と併せてお聴きください。

 

IMG_20210131_130239.jpg

 

IMG_20210131_143421.jpg

2020-11-16 16:41:00
The Magpie Arc / Ep1(2020)
IMG_20201113_102955.jpg

マーティン・シンプソンとナンシー・カーの新しいバンド、The Magpie Arcのデビュー10インチ『Ep1』が彼らの住むイングランド中部のシェフィールドから届きました。

 

マグパイ・アークはマーティンとナンシーのほか、エディ・リーダーやハイジ・タルボットともレコーディング歴のあるエジンバラの新進気鋭のSSW、アダム・ホームズに、ドラムスのトム・A・ライト(新生アルビオン・バンド!!)とベースのアレックス・ハンター(アダム・ホームズ&エンバーズ)を加えた5人組。完全なTrad-Arrではなく、むしろ『What We Did on Our Holidays』辺りのフェアポートを想わせるフォーク・ロックを聴かせます。

 

バンド結成のアイデアはアダムとナンシーがお互いを賞賛することから自然に生まれ、アダムのベーシストであるアレックスとナンシーのプロデューサー兼ドラマーであるトムの組み合わせにより、完璧なフォーク・ロックのリズム・セクションが出来上がりました。残るはリード・ギタリストです。そこでナンシーとトム同様シェフィールドに住む マーティン・シンプソンに白羽の矢が立ち、エジンバラとシェフィールドを拠点にするクロス・ボーダーなフォーク・ロック・バンドが生まれたのでした。

  

録音はコロナのニュースが届き始めた2月にシェフィールドのYellow Arch Studiosでトム・A・ライトのプロデュースにより始まり、ロックダウンが緩和された夏にアルバム1枚分のベーシックなトラックが出来上がりました。その後フェアポートやサンディ・デニー、ニック・ドレイクを手掛けたジョン・ウッドのエンジニアリングで追加の録音が行われて完成に至りました。オリジナル曲だけでなく、いくつかのレアで示唆に富むカヴァー曲や新たな解釈が施されたトラッド曲もあるとのこと、今回の『Ep1』を皮切りに3枚のEPに分けてリリースされる予定です。

 

さて『Ep1』です。4曲入りの10インチカラーヴァイナルの幕開けはナンシー・カー作〈Canon〉。要所要所でキラリと光るマーティンのギターと推進力のあるトムのドラミングをバックにナンシーの歌声はここではむしろジャッキー・マクシーを想わせます。続く〈Whenever I'm Alone〉はアダムとトムの共作。卓越したコーラス・ワークとナンシーのフィドルを前面に押し出し、初期のフェアポートがそうだったようにマグパイ・アークのアメリカ志向の側面を垣間見せています。B面はマーティンの〈Love Never Dies〉でスタート。既に2003年リリースの『Righteousness & Humidity』に収録されていた自作曲の再録ですが、メンフィスのトラック・ストップでの出来事を唄ったこの曲はギター・ワークのみならずソング・ライティングに於いてもクオリティの高さを物語るマーティンの代表作と云っていいでしょう。最後の〈Autumn Leaves〉はアダムの書いた親しみやすいメロディを持ったフォーク・ロック曲。ハイジ・タルボットとジョン・マッカスカーの『Love Is the Bridge Between Two Hearts』にヴォーカルで参加し、2019年にはハイジとArcade名義で『Face The Fall』をリリースしたアダム・ホームズは自身のアルバムも3枚ある要チェックのSSWでした。

 

ご来店の際にリクエストしてください。

 

The Magpie Arc / EP1

Collective/Perspective 1FOR10 (10" EP, UK, 25 September 2020)

 

Produced and recorded by Tom A. Wright at Yellow Arch Studios and Powered Flight Music, Sheffield ;

Additional production by Adam Holmes;

Additional production and recording by Adam Holmes, John Wood and Jamie Ward;

Mixed by Tom A. Wright at Powered Flight Music, Sheffield ;

Mastered by Nick Cooke

 

Side 1

01. Canon (Nancy Kerr)

02. Whenever I'm Alone (Adam Holmes, Tom A. Wright)

Side 2

01. Love Never Dies (Martin Simpson)

02. Autumn Leaves (Adam Holmes)

 

Musicians

Adam Holmes: lead and background vocals, acoustic and electric guitars, beltar;

Alex Hunter: electric bass guitar;

Nancy Kerr: lead and background vocals, violin, acoustic guitar;

Martin Simpson: lead vocals, electric and acoustic guitars;

Tom A. Wright: lead and background vocals, drums, percussion, electric and acoustic guitars, pedal steel guitar, keyboards

2020-11-01 15:56:34
Ron Sexsmith / Ron Sexsmith(1995, 2020)
IMG_20201101_154148.jpg

1995年に発表されたロン・セクスミスのデビュー・アルバムがリリース25周年を記念してアナログ化されました。もともと名盤の誉れ高い本作、これまでCDでは最後にダニエル・ラノアがプロデュースした〈There's a Rhythm〉が本編とダブって収録されていましたが、今回のアナログ化に際してこのトラックが削られ、ロンが当初構想したトラックリストに戻されたとのこと。A面はアコースティック・ギターとチェロのアンサンブルが美しい、生まれたばかりの息子について唄った〈Speaking with the Angel〉で終わり、B面は育った路地の思い出〈Galbraith Street〉をアルバム唯一の弾き語りで締め括るという、いかにもSSWの名盤らしい構成の復元です。発表当時エルヴィス・コステロに「この先20年は聴き続けられるアルバム」と評価された本作、20年と云わず、あの『ブルー・リヴァー』と並ぶSSWの名盤としてレコード棚にいつまでも燦然と輝き続けるでしょう。

  

ご来店の際にリクエストしてください。

2020-09-09 10:45:48
Shirley Collins / Heart's Ease(2020)
IMG_20200909_102818.jpg

2016年の『Lodestar』に続くシャーリー・コリンズの復活第2作が届きました。プロデュースのイアン・キアリー(元Oysterband)や脇を固めるアルビオン・モリスのジョン・ウォッチャム、ラトル・オン・ザ・ストーヴパイプのデイヴ・アーサーとピート・クーパーなどのバックの面子はほぼ変わりありませんが、今回はスタジオ録音。リラックスできるようにとシャーリーの自宅で録音された「暫定的」な前作に比べ、シャーリーの復活劇は本格的に幕が開けられたようです。

 

ジョージ・メイナード、ボブ・コッパー、ハリー・アプトンなどサセックスの先人達のトラッド曲が並ぶなか、元夫オースティン・ジョン・マーシャルの詞にトラッド曲を付け唄われた〈Whitsun Dance〉と〈Sweet Greens and Blues〉の収録がとりわけ印象的です。オースティン・ジョンはハッチングスと出会う前のシャーリーの夫君で、デイヴィー・グレアムとの屈指の名盤『Folk Roots, New Routes』を企画したり、『The Sweet Primeroses』『Anthems in Eden』『Love, Death and the Lady』などこの時期の一連のアルバムをプロデュースし、シャーリー・コリンズを語るうえで欠かせない人物です。

 

さて〈Whitsun Dance〉ですが、ふだんは男性が踊るモリス・ダンスを第一次世界大戦後のイングランドのいくつかの町や村では戦争で夫や恋人を失った女性たちが踊り、モリス・ダンスの伝統を守ったというもの。かつてシャーリーはオースティン・ジョンの詞をボブ・コッパーの〈The Week Before Easter〉のメロディーに乗せ『Anthems in Eden』で唄いました。〈Staines Morris〉が被さるように続けて収録されたオリジナル盤の唐突さには今でも驚かされますが、今回は〈Orange in Bloom〉のモリス・チューンがこの曲に続き、アルビオン・モリスのジョン・ウォッチャムが素晴らしいコンサーティーナを聴かせてくれます。

 

〈Sweet Greens and Blues〉は1960年代に自宅で録ったデイヴィー・グレアムとのセッション・テープが発見され、そのテープに収録されていた曲で、オースティン・ジョンはシャーリーとの2人の子ども、ポリーとロバートのいる家庭について唄っています。本アルバムへの収録はロバートの勧めで行われ、「和解」であり「癒し」であるとシャーリーはあるインタビューで語っています。曲の前後に配置されたインスト曲はシャーリーとは縁の深いアラン・ローマックス・アーカイヴでキュレイターを務めるギタリスト、ネイサン・サルスバーグが用意した〈Sweet Blues and Greens〉。ジェイムス・テイラーを想わせるネイサンのギターが"Remembering Austin John Marshall (1937-2013)"と記されたアルバムに華を添えています。

 

また〈Locked in Ice〉も聴きどころの1つです。北極海域で「幽霊船」になったベイチモ号を唄った曲で、作者のBuz Collinsはドリー・コリンズの息子さん、シャーリーの甥にあたります。フェルサイドにアルバム『Water and Rain』を残し、2002年に亡くなったようで、スタン・ロジャースを想わせるSSWです。シャーリーはオリジナルより幾分テンポを落とし、時代設定も1世紀遡り、ズバリ〈The Baychimo〉であった曲名を〈Locked in Ice〉とし唄っていますが、〈Locked in Ice〉は35年間凍結されていたシャーリーの歌声のメタファーでしょうか。

 

他に初めてレコーディングに参加した『Folk Song Today』で唄った〈Dabbling in the Dew〉の再録音や1959年アラン・ローマックスに同行した"サザン・ジャーニー"で出会ったアパラチアン・トラッドなど生涯を振り返るような選曲。齢84歳、この存在感はディランに勝るとも劣りません。

 

Tracks Side 1

01. The Merry Golden Tree (trad. arr. Collins, Kearey)

02. Rolling in the Dew (trad. arr. Collins, Kearey)

03. Christmas Song (trad. arr. Bob Copper)

04. Locked in Ice (Buz Collins)

05. Wondrous Love (trad. arr. Collins, Kearey)

06. Barbara Allen (trad. arr. Collins, Kearey)

Side 2

01. Canadee-I-O (trad. arr. Collins, Barnes)

02. Sweet Greens and Blues (words Marshall, tune trad. arr. Collins, Kearey)

03. Tell Me True (trad. arr. Collins, Kearey)

04. Whitsun Dance (words Marshall, tune A Week Before Easter, trad. arr. Copper)

05. Orange in Bloom (trad. arr. IKearey)

06. Crowlink (Ossian Brown, Matthew Shaw)

 

Produced by Ian Kearey; Recorded at Metway Studios, Brighton; Mixed by Al Scott;

 

Shirley Collins, vocals

Davy Graham, guitar [bonus single]

 

The Lodestar Band

Ian Kearey, Pete Cooper, Dave Arthur, Ossian Brown, Pip Barnes, John Watcham, Glen Redman

 

with special guests

Nathan Salsburg, Matthew Shaw

1 2 3 4 5 6 7 8 9