Vinyl and so on

arrival
2020-11-16 16:41:00
The Magpie Arc / Ep1(2020)
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マーティン・シンプソンとナンシー・カーの新しいバンド、The Magpie Arcのデビュー10インチ『Ep1』が彼らの住むイングランド中部のシェフィールドから届きました。

 

マグパイ・アークはマーティンとナンシーのほか、エディ・リーダーやハイジ・タルボットともレコーディング歴のあるエジンバラの新進気鋭のSSW、アダム・ホームズに、ドラムスのトム・A・ライト(新生アルビオン・バンド!!)とベースのアレックス・ハンター(アダム・ホームズ&エンバーズ)を加えた5人組。完全なTrad-Arrではなく、むしろ『What We Did on Our Holidays』辺りのフェアポートを想わせるフォーク・ロックを聴かせます。

 

バンド結成のアイデアはアダムとナンシーがお互いを賞賛することから自然に生まれ、アダムのベーシストであるアレックスとナンシーのプロデューサー兼ドラマーであるトムの組み合わせにより、完璧なフォーク・ロックのリズム・セクションが出来上がりました。残るはリード・ギタリストです。そこでナンシーとトム同様シェフィールドに住む マーティン・シンプソンに白羽の矢が立ち、エジンバラとシェフィールドを拠点にするクロス・ボーダーなフォーク・ロック・バンドが生まれたのでした。

  

録音はコロナのニュースが届き始めた2月にシェフィールドのYellow Arch Studiosでトム・A・ライトのプロデュースにより始まり、ロックダウンが緩和された夏にアルバム1枚分のベーシックなトラックが出来上がりました。その後フェアポートやサンディ・デニー、ニック・ドレイクを手掛けたジョン・ウッドのエンジニアリングで追加の録音が行われて完成に至りました。オリジナル曲だけでなく、いくつかのレアで示唆に富むカヴァー曲や新たな解釈が施されたトラッド曲もあるとのこと、今回の『Ep1』を皮切りに3枚のEPに分けてリリースされる予定です。

 

さて『Ep1』です。4曲入りの10インチカラーヴァイナルの幕開けはナンシー・カー作〈Canon〉。要所要所でキラリと光るマーティンのギターと推進力のあるトムのドラミングをバックにナンシーの歌声はここではむしろジャッキー・マクシーを想わせます。続く〈Whenever I'm Alone〉はアダムとトムの共作。卓越したコーラス・ワークとナンシーのフィドルを前面に押し出し、初期のフェアポートがそうだったようにマグパイ・アークのアメリカ志向の側面を垣間見せています。B面はマーティンの〈Love Never Dies〉でスタート。既に2003年リリースの『Righteousness & Humidity』に収録されていた自作曲の再録ですが、メンフィスのトラック・ストップでの出来事を唄ったこの曲はギター・ワークのみならずソング・ライティングに於いてもクオリティの高さを物語るマーティンの代表作と云っていいでしょう。最後の〈Autumn Leaves〉はアダムの書いた親しみやすいメロディを持ったフォーク・ロック曲。ハイジ・タルボットとジョン・マッカスカーの『Love Is the Bridge Between Two Hearts』にヴォーカルで参加し、2019年にはハイジとArcade名義で『Face The Fall』をリリースしたアダム・ホームズは自身のアルバムも3枚ある要チェックのSSWでした。

 

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The Magpie Arc / EP1

Collective/Perspective 1FOR10 (10" EP, UK, 25 September 2020)

 

Produced and recorded by Tom A. Wright at Yellow Arch Studios and Powered Flight Music, Sheffield ;

Additional production by Adam Holmes;

Additional production and recording by Adam Holmes, John Wood and Jamie Ward;

Mixed by Tom A. Wright at Powered Flight Music, Sheffield ;

Mastered by Nick Cooke

 

Side 1

01. Canon (Nancy Kerr)

02. Whenever I'm Alone (Adam Holmes, Tom A. Wright)

Side 2

01. Love Never Dies (Martin Simpson)

02. Autumn Leaves (Adam Holmes)

 

Musicians

Adam Holmes: lead and background vocals, acoustic and electric guitars, beltar;

Alex Hunter: electric bass guitar;

Nancy Kerr: lead and background vocals, violin, acoustic guitar;

Martin Simpson: lead vocals, electric and acoustic guitars;

Tom A. Wright: lead and background vocals, drums, percussion, electric and acoustic guitars, pedal steel guitar, keyboards

2020-11-01 15:56:34
Ron Sexsmith / Ron Sexsmith(1995, 2020)
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1995年に発表されたロン・セクスミスのデビュー・アルバムがリリース25周年を記念してアナログ化されました。もともと名盤の誉れ高い本作、これまでCDでは最後にダニエル・ラノアがプロデュースした〈There's a Rhythm〉が本編とダブって収録されていましたが、今回のアナログ化に際してこのトラックが削られ、ロンが当初構想したトラックリストに戻されたとのこと。A面はアコースティック・ギターとチェロのアンサンブルが美しい、生まれたばかりの息子について唄った〈Speaking with the Angel〉で終わり、B面は育った路地の思い出〈Galbraith Street〉をアルバム唯一の弾き語りで締め括るという、いかにもSSWの名盤らしい構成の復元です。発表当時エルヴィス・コステロに「この先20年は聴き続けられるアルバム」と評価された本作、20年と云わず、あの『ブルー・リヴァー』と並ぶSSWの名盤としてレコード棚にいつまでも燦然と輝き続けるでしょう。

  

ご来店の際にリクエストしてください。

2020-09-09 10:45:48
Shirley Collins / Heart's Ease(2020)
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2016年の『Lodestar』に続くシャーリー・コリンズの復活第2作が届きました。プロデュースのイアン・キアリー(元Oysterband)や脇を固めるアルビオン・モリスのジョン・ウォッチャム、ラトル・オン・ザ・ストーヴパイプのデイヴ・アーサーとピート・クーパーなどのバックの面子はほぼ変わりありませんが、今回はスタジオ録音。リラックスできるようにとシャーリーの自宅で録音された「暫定的」な前作に比べ、シャーリーの復活劇は本格的に幕が開けられたようです。

 

ジョージ・メイナード、ボブ・コッパー、ハリー・アプトンなどサセックスの先人達のトラッド曲が並ぶなか、元夫オースティン・ジョン・マーシャルの詞にトラッド曲を付け唄われた〈Whitsun Dance〉と〈Sweet Greens and Blues〉の収録がとりわけ印象的です。オースティン・ジョンはハッチングスと出会う前のシャーリーの夫君で、デイヴィー・グレアムとの屈指の名盤『Folk Roots, New Routes』を企画したり、『The Sweet Primeroses』『Anthems in Eden』『Love, Death and the Lady』などこの時期の一連のアルバムをプロデュースし、シャーリー・コリンズを語るうえで欠かせない人物です。

 

さて〈Whitsun Dance〉ですが、ふだんは男性が踊るモリス・ダンスを第一次世界大戦後のイングランドのいくつかの町や村では戦争で夫や恋人を失った女性たちが踊り、モリス・ダンスの伝統を守ったというもの。かつてシャーリーはオースティン・ジョンの詞をボブ・コッパーの〈The Week Before Easter〉のメロディーに乗せ『Anthems in Eden』で唄いました。〈Staines Morris〉が被さるように続けて収録されたオリジナル盤の唐突さには今でも驚かされますが、今回は〈Orange in Bloom〉のモリス・チューンがこの曲に続き、アルビオン・モリスのジョン・ウォッチャムが素晴らしいコンサーティーナを聴かせてくれます。

 

〈Sweet Greens and Blues〉は1960年代に自宅で録ったデイヴィー・グレアムとのセッション・テープが発見され、そのテープに収録されていた曲で、オースティン・ジョンはシャーリーとの2人の子ども、ポリーとロバートのいる家庭について唄っています。本アルバムへの収録はロバートの勧めで行われ、「和解」であり「癒し」であるとシャーリーはあるインタビューで語っています。曲の前後に配置されたインスト曲はシャーリーとは縁の深いアラン・ローマックス・アーカイヴでキュレイターを務めるギタリスト、ネイサン・サルスバーグが用意した〈Sweet Blues and Greens〉。ジェイムス・テイラーを想わせるネイサンのギターが"Remembering Austin John Marshall (1937-2013)"と記されたアルバムに華を添えています。

 

また〈Locked in Ice〉も聴きどころの1つです。北極海域で「幽霊船」になったベイチモ号を唄った曲で、作者のBuz Collinsはドリー・コリンズの息子さん、シャーリーの甥にあたります。フェルサイドにアルバム『Water and Rain』を残し、2002年に亡くなったようで、スタン・ロジャースを想わせるSSWです。シャーリーはオリジナルより幾分テンポを落とし、時代設定も1世紀遡り、ズバリ〈The Baychimo〉であった曲名を〈Locked in Ice〉とし唄っていますが、〈Locked in Ice〉は35年間凍結されていたシャーリーの歌声のメタファーでしょうか。

 

他に初めてレコーディングに参加した『Folk Song Today』で唄った〈Dabbling in the Dew〉の再録音や1959年アラン・ローマックスに同行した"サザン・ジャーニー"で出会ったアパラチアン・トラッドなど生涯を振り返るような選曲。齢84歳、この存在感はディランに勝るとも劣りません。

 

Tracks Side 1

01. The Merry Golden Tree (trad. arr. Collins, Kearey)

02. Rolling in the Dew (trad. arr. Collins, Kearey)

03. Christmas Song (trad. arr. Bob Copper)

04. Locked in Ice (Buz Collins)

05. Wondrous Love (trad. arr. Collins, Kearey)

06. Barbara Allen (trad. arr. Collins, Kearey)

Side 2

01. Canadee-I-O (trad. arr. Collins, Barnes)

02. Sweet Greens and Blues (words Marshall, tune trad. arr. Collins, Kearey)

03. Tell Me True (trad. arr. Collins, Kearey)

04. Whitsun Dance (words Marshall, tune A Week Before Easter, trad. arr. Copper)

05. Orange in Bloom (trad. arr. IKearey)

06. Crowlink (Ossian Brown, Matthew Shaw)

 

Produced by Ian Kearey; Recorded at Metway Studios, Brighton; Mixed by Al Scott;

 

Shirley Collins, vocals

Davy Graham, guitar [bonus single]

 

The Lodestar Band

Ian Kearey, Pete Cooper, Dave Arthur, Ossian Brown, Pip Barnes, John Watcham, Glen Redman

 

with special guests

Nathan Salsburg, Matthew Shaw

2020-07-31 12:23:17
The Unthanks / Live and Unaccompanied : Diversions Vol. 5(2020)
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ジ・アンサンクスはイングランドは北東端のノーサンバーランドでリヴァイヴァリストの両親に育てられたレイチェルとベッキーのアンサンク姉妹を中心とした5人組で、既に6枚のオリジナル・アルバムと4枚のDiversions Seriesをリリースしています。そのディヴァージョンズ・シリーズ(寄り道シリーズ?)でロバート・ワイアットやアントニー&ザ・ジョンソンズ、 モリー・ ドレイク(ニックの母親です)の楽曲を取り上げ彼らに敬意を表したり、スティングのアルバムに参加するなど、フォーク・ミュージックのカテゴリーに収まらない活躍ぶりです。 

 

本作はディヴァージョンズ・シリーズの5作目で、この5月にリリースされた最新作。いつもは姉妹にプロデューサーでピアニストのエイドリアン・マクナリー、ベースとギターのクリス・プライス、ヴァイオリンのニオファ・キーガンを加えた5人でライブを行うアンサンクスですが、 「Unaccompanied, As We Are」と名付けられた昨年の春のツアーは少し異なっていました。姉妹にニオファを加えた女声トリオのみによる無伴奏ツアーで、英国とアイルランドの31か所を巡ったなかから選りすぐりの13曲が収められています。 

 

13曲中トラッドは3曲、他にコニー・コンヴァース、デイヴ・ドッヅ、ピーター・ベラミー、ジョニー・ハンドル、モリー・ドレイク、リチャード・ドウソン、グレイム・マイルズなど渋めのソング・ライターの楽曲が並ぶさまは流石アンサンクスと云ったところです。 

 

なかでも〈Magpie〉は秀逸。もともとロック・バンド、レッド・ジャスパーのデイヴ・ドッヅが書いた楽曲で、Jim Mageean & Johnny Collinsが1982年の『Live at Herga!』で取り上げていました。Jim Mageean & Johnny Collinsのジムは姉妹の父親ジョージ・アンサンクとは地元ニューカッスルで伝説的なフォーク・グループ、キーラーズの仲間同士。またニューカッスル大学でフォーク・ミュージックの学位コースを持っていたジムはアンサンクスがトラッドを唄ううえで公私ともに大きな存在であった筈です。 

 

そんなジムがかつて唄った「一羽なら悲しみ、二羽なら喜び。三羽なら娘、四羽なら息子。五羽なら銀で、六羽なら金。七羽ならそれは明かされたことのない秘密」と云う民間に伝わる数え歌をリフレインに持ったこのプログレ・ナンバーを、レイチェルとベッキー、ニオファはミステリアスながらも息の合った歌声でラルとマイクのウォータースン兄妹の〈Fine Horseman〉や〈The Scarecrow〉クラスの準トラッドに仕立てています。 

 

Special Film Editionということでアルバムにはツアーのオン、オフ・ステージを捉えた27分間のドキュメンタリー『As We Go』を収録したDVDが付いています。そのなかでレイチェル、ベッキー、ニオファはオープニング・アクトのティム・ダリングを加えアンコールで唄った〈Love Is Like A River〉でソウルフルなゴスペル・コーラスを披露。色んなことができる人たちなのですね。 

 

A1. One By One – Connie Converse 

A2. Magpie – Dave Dodds 

A3. I'm Weary of Lying Alone – Trad.  

A4. Geordie Wedding Set:  – Trad. (We'll Aal Be Wed in Our Auld Claiths / Hi Canny Man) 

A5. Griesly Bride – John Manifold, Tom Campbell 

A6. Bees (Honeybee – Connie Converse / The Bee-Boy's Song – Kipling, Bellamy) 

 

B1. Guard Yer Man Weel – Johnny Handle, The Unthanks 

B2. Poor Mum – Molly Drake 

B3. Where've Yer Bin Dick – Lea Nicholson 

B4. We Picked Apples in a Graveyard Freshly Mowed – Richard Dawson 

B5. Bread and Roses – James Oppenheim, Mimi Fariña 

B6. Caught in a Storm – Graeme Miles 

B7. Farewell Shanty – Trad. 

 

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久々に聴いたJim Mageean & Johnny Collinsの『Live at Herga!』。〈Magpie〉はB面5曲目で、A面ではスタン・ロジャースの〈Northwest Passage〉を客席と大コーラスしています。

2020-07-22 13:14:18
『From There To Here』『Fire & Fleet』『Natural Invention』
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今月も大分のタムボリンさんからオーダーしていたCDが届きました。どれも素晴らしいのでご紹介します。

 

Jacqui McShee and Kevin Dempsey / From There To Here(2020)

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バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーン亡きあとジャッキー・マクシーがタッグを組んだギタリストは元ダンドー・シャフト、ウィッパースナッパーのケヴィン・デンプシー。ヴァーサタイルなケヴィンのギターがジャッキーの穏やかな歌声にそっと寄り添います。ナット・キング・コールの〈Nature Boy〉で幕をあけ、ジャッキーの唄う感動の〈Lord Franklin〉などトラッド4曲、イェーツの詩に新たに曲を付けた〈Innisfree〉など共作曲5曲の全10曲を収録。トム・ラッシュやジェイムズ・テイラーを想わせるケヴィンの歌声もなかなかです。 

 

June Tabor & Oysterband / Fire & Fleet(2019)

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ジューン・テイバーとオイスター・バンドとのコラボも今回で3作目。昨年秋のツアーに併せて用意されたアルバムで、スタジオ録音は4曲、あとは前回、前々回のツアーからと思われるライブ音源が6曲。そのライブ音源が秀逸。ジョン・ジョーンズのメローディオンの弾き語りで始まる〈The Dark End of the Street〉、客席から笑い声が漏れるビル・ステインズ作〈Roseville Fair〉はレス・バーカー・ヴァージョン、前作でシングル・カットされたジョイ・ディヴィジョンの〈Love Will Tear Us Apart〉、ジーニー・ロバートソンの歌唱から学んだという〈When I Was Noo But Sweet Sixteen〉、そして圧巻のグレース・スリックは〈White Rabbit〉、の流れは凄いです。

 

Peter Knight's Gigspanner Big Band / Natural Invention(2020)

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通常はPeter Knight's Gigspannerで活動している元スティーライ・スパンのピーター・ナイト。ハンナ・マーティンとフィリップ・ヘンリーのエッジラークスと組んだ時はビック・バンドを名乗りますが、前回がライヴ盤だったので初めてのスタジオ録音。更に今回はメローディオンに元ベロウヘッド、スピアーズ&ボーデンのジョン・スピアーズも加わりパワー・アップしています。ピーターのフィドルを中心にドブロやメローディオンなどを駆使したアンサンブルが素晴らしく、とりわけジョン・スピアーズが適度なイングリッシュネスを醸し、いい仕事をしています。もちろんハンナ・マーティンの低く抑えの効いたヴォーカルも良く、ニック・ジョーンズの〈Courting Is a Pleasure〉を唄っています。

 

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