Vinyl and so on

Nora Brown with Sarah Kate Morgan『Live From Bristol』Jalopy Records, 2023
Nora Brown and Stephanie Coleman『Lady of the Lake』Jalopy Records, 2023
ノラ・ブラウン、2023年の仕事です。
1枚はサラ・ケイト・モーガンとリリースした7インチ『Live From Bristol』。A面の〈Down in the Willow Garden〉はマーダーバラッド、B面〈Waynesboro〉はインストで、サラ・ケイトはマンウンテンダルシマーとコーラスでノラをサポートしています。
もう1枚の『Lady of the Lake』はフィドルのステファニー・コールマンとコラボした10インチ。ステファニーとのレコーディングは2019年のデビュー作『Cinnamon Tree』以来。そのステファニーは現在アンクルアールのメンバーとのこと、気づきませんでした。4曲中タイトル曲の〈Lady of the Lake〉と〈Twin Sisters〉がインストで、〈Gone So Long〉と〈Copper Kettle〉が唄もの。インストではステファニーが、唄ものではノラがイニシアティブをとっているようで、ディランも唄った〈Copper Kettle〉での益々渋くなったノラの歌声が聴きどころです。
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Nick Hart & Tom Moore『The Colour of Amber』Slow Worm Records, 22 November 2023
昨年リリースされたニック・ハートの最新作が届きました。『Nick Hart Sings Eight English Folk Songs』を振出しに『Nine』『Ten』と続いたシングス・イングリッシュ・フォークソング・シリーズは小休止。1枚目からずっとニックをサポートをしてきたMoore Moss Rutterのトム・ムーアとの共演盤です。今回はお馴染みのギター弾き語りは封印し、自身の弾くヴィオラ・ダ・ガンバとトムのヴィオラ、そして後からダビングされたハーモニウムのドローンで唄っています。
クラシカルな演奏にのせて唄われるのはジョン・カークパトリックがブラスモンキーで唄った〈The Jolly Bold Robber〉やマーティン・カーシーの〈Three Jolly Sneaksmen〉などトラッドが6曲。いずれもゆったりとしたテンポで唄われ、穏やかな歌声には温かみが溢れています。最後の〈Bold Riley〉は『A Sailor’s Garland』におけるA・L・ロイドの歌唱が初出のシーシャンティ。元ラムズ・ボトムのキース・ケンドリックに多くを負っているとライナーには記されていますが、むしろケイト・ラスビーのヴァージョンを想いおこす方が多いのでは。揚帆作業で唄われるハリヤードをニックはテンポを落とし、まるでエレジーのように唄っています。
またトムのヴィオラをフューチャーしたインスト4曲も素晴らしく、〈Swaggering Boney〉〈Constant Billy〉など モリス・チューンやジョン・プレイフォードのダンシング・マスターから〈The Child Grove〉のカントリー・ダンス・チューンが、ヴィオラとヴィオラ・ダ・ガンバのイナたくも優雅な演奏で堪能できます。そして〈Flowers of Edinburgh〉はプラントライフの名アンソロジー『English Melodeon Players』(1986)からトニー・ホールの演奏をお手本にしたもの。母親の胎内にいるときからトニーのメロディオンを聴かされていたトムにとってトニーの音楽は今でも根強いお気に入りだとか。唄も演奏も良し。鮮やかさが際立った、昨年聴いた中でも指折りのアルバムです。
ちなみに『English Melodeon Players』にはトニー・ホールのほかロッド・ストラドリング、ロジャー・ワトソン、デイヴ・ロバーツなどの素晴らしい演奏が収められていますが、同レーベルには『English Fiddle Players』と云うアルバムもあり、どちらも必聴です。
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Various Artists『Imaginational Anthem vol. XII : I Thought I Told You - A Yorkshire Tribute to Michael Chapman』 Tompkins Square, 2023
トンプキンス・スクエアのイマジネイショナル・アンセムももう第12弾。今回は2021年に亡くなったリーズ出身のSSWでギター・ヴァーチュオーゾとしても知られるマイケル・チャップマンのトリビュートです。デビュー作『Silent Spring』が素晴らしかったヘンリー・パーカーがキュレーターを務め、地元ヨークシャーの若手ミュージシャンに声をかけて同郷のギター・ヒーローを讃えています。弾き語りからエクスペリメンタルな作品まで様々なアプローチが可能なのはチャップマンの懐の深さでしょう。ヘンリー・パーカー〈In the ValleyKatie〉、ケイティ・スペンサー〈You Say〉、クリス・ブレイン(wow!!)〈Among the Trees)が良い。
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