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カフェトラモナ5月のおすすめです。
上左:Shelby Lynne / Shelby Lynne(2020)
2月のおすすめレコードで実妹アリソン・ムーラーとのデュオ・アルバム『Not Dark Yet』をご紹介したシェルビー・リンの通算16作目の最新作です。ニーナ・シモンの伝記映画『Nina』を手掛けたシンシア・モート監督の新作映画『When We Kill the Creators』にシェルビーが出演したことを切っ掛けに生まれたアルバムで、殆どの曲の作詞をモート監督が担当し、シェルビーがピアノ、ギター、ベース、ドラムなどバックの演奏を基本ひとりで行っているなど話題に事欠きません。が、一番の魅力はダスティ・スプリングフィールドを想わせるカントリー・ソウルな彼女の歌声で、その意味では2008年の『Just A Little Lovin'』と並ぶシェルビーの代表作でしょう。
上右:Dean Owens / The Man From Leith (The Best of Dean Owens)(2020)
エジンバラ出身のディーン・オウエンズはスコットランドのSSW。90年代の中頃からオルタナ・カントリー・バンド、フェルソンズのフロントマンとして活躍し、既にソロ・アルバムも7枚リリースしています。初めの1、2作こそスコットランドで録音されていましたが、3作目以降はアル・パーキンスやウィル・キンブロウらを招きナッシュヴィルやニューヨークで制作しているようです。本作はベスト・アルバムですが、そのロン・セクスミスを想わせる端正な歌声はすべてのアルバムを聴いてみたくなるほどの魅力を湛えています。トラックによってはカリン・ポルワートとのデュエットも聴け、現在アリゾナのツーソンで進められているキャレキシコとの新録が待ち遠しい1枚です。
下左:Tim Easton / Exposition(2019)
ラッカー盤に直接レコーディングする昔ながらの方式で録音された前作『Paco & the Melodic Polaroids』が素晴らしかったティム・イーストン。ソロ10枚目の本作はアメリカの音楽史にとって重要な意味を持つ3か所で“フィールド・レコーディング”されたベーシック・トラックに必要に応じて自身のピアノやパーカッションなどを被せただけのアコースティック・アルバムです。その3か所とはウディ・ガスリーが生まれたオクラホマ州オケマーの博物館、ロバート・ジョンソンの歴史的録音が行われたテキサス州サン・アントニオのガンター・ホテル、マディ・ウォーターズ揺籃の地ミシシッピ州クラークスデールにあるシャック・アップ・インで、フォーク・シンガーとしてのティム・イーストンの心意気がヒシヒシと伝わるアルバムです。
下右:Geoff Muldaur And The Texas Sheiks / Texas Sheiks(2009)
5月8日に11回目の命日を迎えるテキサスのSSW/ギタリスト、スティーヴン・ブルトン。闘病中のスティーヴンを励まそうと古くから親交のあったジェフ・マルダーが中心になってテキサスやボストンの仲間と立ち上げたプロジェクトで、メンバーは『The Secret Handshake』でスティーヴンと一緒にジェフをバックアップしていたジョニー・ニコラス、リゼントメンツでの盟友ブルース・ヒューズなど。もちろんジム・クエスキンも参加しています。スティーヴンはヴォーカルこそ披露していませんが、ギター、マンドリン、バンジョーで大活躍、〈All By Myself〉では渾身のギター・ソロも聴かせてくれます。90年3月青山スパイラルガーデンのステージでジェフとマリアの元夫妻をバックアップしていたスティーヴン。クリス・クリストファーソンのバンドでキャリアをスタートさせたテキサスのギタリストとボストンのフォーキー達との結びつきが長い間イメージできなかったのですが本作のライナーで納得。ビル・キースのバンジョーが取り持った縁だったのですね。合掌。
カフェトラモナ4月のおすすめです。
上左:Danny Barnes / Man On Fire(2020)
元バッド・リヴァーズのメンバーでスティーヴ・マーチンのバンジョー・プライズを受賞したことのあるダニー・バーンズはバンジョーの名手。前作の『Stove Up』はキャリア初の純ブルーグラス・アルバムでしたが、今回はエクスペリメンタルな面は抑えられているもののいつものダニー・バーンズが戻ってきました。例えば〈Awful Strange〉や〈Zundapp〉のようにディランと一緒に来るはずだったマット・チェンバレンのドラムスにツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズのベースがうねるように絡みつくファンキーなリズム・セクションとバンジョーとのコンビネーションはバーンズならではのもの。もちろん土臭くアコースティックな〈Coal Mine〉や〈Ballad Of Nope〉なども聴きどころの1つでその〈Coal Mine〉ではジョンジーのマンドリンも聴くことができます。
上右:Kelly Finnigan / The Tales People Tell(2019)
ベイエリアで活躍するサイケデリック・ソウル・バンド、モノフォニックスのキーボード兼リード・シンガー、ケリー・フィニガンのソロ・デビュー作。トラモナでのコレクションの所以は、父親が70年代にジェリー・ウェクスラーのプロデュースでスワンプの名作をものしたマイク・フィニガンという出自とその血を受け継いだすこぶる黒っぽい歌声に他なりません。ケリーの歌声を初めて聴いた時すぐさまエディー・ヒントンの『Very Extremely Dangerous』を想いうかべました。ソウルフルかつメロウな歌声と演奏はまるで60年代終わり~70年代初めのソウル・アルバム。ジャケットの片隅がカットアウトでもされていれば100点満点です。
下左:Jack Rutter / Hills(2017)
英国の若手トラッド・バンドMoore Moss Rutterのギタリスト兼シンガー、ジャック・ラターの1stソロ(既に2ndもリリース済み)。ウェストヨークシャー出身のジャックらしく本作ではフランク・キッドスン、ウォータースンズ、フランク・ヒンクリフなどのヨークシャーゆかりの楽曲を数多く取り上げていますが、なかでもサウスヨークシャー出身のデイヴ・バーランドがデビュー作で唄いアルバム・タイトルにもした〈The Dalesman's Litany〉が真っ先に目を引くところでしょう。全曲ギター、ブズーキ若しくはコンサーティーナの弾き語り。一つの歌声に一つの楽器、ダビング無しの全くのスタジオ一発録りは元ベロウヘッドのジョン・ボーデンが云うように70年代のフォーク・クラシックスを髣髴させる名盤です。
下右:Randy Newman / The Randy Newman Song Book(2016)
2月のライブで細井さんが聴かせてくれたランディ・ニューマンの〈Simon Smith And The Amazing Dancing Bear〉と〈Short People〉のピアノ弾き語りはいたく感動的でした。ランディ・ニューマンの弾き語りと云えばかつて『Live』という名作がありましたが、ランディは今世紀に入り自身のキャリアを振り返るかのように自作曲のピアノ弾き語りアルバムを3枚リリースしました。本作は『Vol.3』がリリースされたタイミングでこれまでCDと配信でしかリリースされていなかったCD3枚分にボーナス・トラックを加え、曲順を入れ替えアナログ化したもの。LP4枚組はもちろん質も量もともに名作『Live』を超えたコンプリート弾き語り集です。それはそうと『Hosoi Sings Newman』なんてLive出来ないかなぁ。
ご来店の際にリクエストしてください。
4月5日に予定していた『やぎたこ at Cafe ToRamona Vol.2』は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため延期させていただきます。
楽しみにされていたお客様ややぎたこさんには大変ご迷惑をおかけしますが、収束後改めて日程を調整し、ライブを企画いたしますのでよろしくお願いいたします。
このたび山口県岩国市のヒマールさんから刊行される『NEVER TIRE OF THE ROAD 旅に倦(う)むことなし アンディ・アーヴァインうたの世界』をトラモナでも取り扱えることになりました。
アンディ・アーヴァインはスウィーニーズ・メンやプランクシティなどで知られるアイルランド屈指のリヴァイヴァリスト。シンガー・ソングライターとしても活躍し、〈The West Coast Of Clare〉〈Autumn Gold〉〈My Heart's Tonight In Ireland〉など数多くの名曲を書き残しています。
『旅に倦むことなし アンディ・アーヴァインうたの世界』は数多いアンディのレパートリーの中から自作曲11曲、トラッド曲10曲を選りすぐり、アンディ自身による解説とともにその歌詞を翻訳家の柴田元幸さんの対訳で紹介するもの。うたの内容だけでなく唄われた背景も記されているので滋味あふれるアンディ・アーヴァインのうたの世界をさらに奥深く旅することができます。
例えば〈Never Tire Of The Road〉の項を読むとかつてJ・エリオット、D・アダムス、D・ゴーハン、D・ケーン、W・ジョーンズらとドイツのフォーク・フリークに吹き込んだ名盤『Folk Friends 2』でアンディがウディ・ガスリーの〈Seamen Three〉を取り上げたわけが分かります。アンディのウディに対する熱い想いや集まったフォーク・シンガーたちの強い絆をひしひしと感じることができ、改めて〈Never Tire Of The Road〉と〈Seamen Three〉を続けて聴きたくなりました。
本書について詳しくはヒマールさんのサイト(こちら)をご覧ください。
カフェトラモナ店頭でお買い求めください。消費税はサービスさせていただきます。
なお当店ではアンディ・アーヴァイン関連のレコード、CDを多数コレクションしています。
ご来店の際にリクエストしてください。
カフェトラモナ3月のおすすめです。
上左:Ned Roberts / Dream Sweetheart(2020)
一昨年の10月トラモナにやって来たルーサー・ラッセルがその時“新作も録り終えてるよ”って教えてくれたネッド・ロバーツの3作目が到着しました。ネッドはヨーク出身で現在はロンドンで活躍するSSWですが、1st、2ndと同様に本作もルーサーのプロデュースのもとロサンゼルスはエレクトロサウンド・スタジオでの録音です。ピアノ、オルガン、ギター、ドラムに亘るルーサーの八面六臂のバック・アップは的確で、ニック・ドレイクやイアン・マシューズを想わせるネッドのセンシティブな歌声を際立てています。ベースには元フリーホイーラーズのジェイソン・ヒラーも。ロンドン経由で届けられたローレル・キャニオンからの音の便りをお愉しみください。
上右:Jesse Harris / Songs Never Sung(2019)
50歳の誕生日に併せて昨年秋にリリースされていたようです。プロデュースはジェシ自身、バックはビル・フリゼール、ケニー・ウォルセン、トニー・シェアの鉄壁のリズム・セクションとノスタルジックな味わいのCJ・カメリエリのホーン・セクション。プスンブーツも取り上げていたサーシャ・ダブソンの〈You'll Forget Me〉の他は自作曲で、なかでもノラ・ジョーンズがデビュー作で唄った〈I've Got To See You Again〉やリズ・ライトやサーシャの歌声で知られる〈Without You〉のジェシ・ヴァージョンには注目です。ディランやJTと異なり自作曲でアプローチした伝統的かつクラシカルなヴォーカル・アルバムです。
下左:Various Artists / From Here : English Folk Field Recordings Vol.2(2019)
昨年7月のトピック盤『Vision & Revision』と同様に現在の英国トラッド・シーンを俯瞰するには格好のアンソロジーです。主宰者のスティック・イン・ザ・ホイールがイングランド各地を巡り、ナンシー・カー、ジューン・テイバー、レイチェル・アンサンク、ローラ・スマイス&テッド・ケンプなどベテランから若手までをリビングやキッチンに2組のマイクを立てフィールド・レコーディングしたもので、殆どが無伴奏の歌唱。なかでもJ・テイバーが『アカバ』で唄ったデイヴ・サドベリーの〈The King of Rome〉の再演が感動的です。
下右:Martin Simpson & Dom Flemons / A Selection of Ever Popular Favourites(2016)
リアノン・ギデンスの来日がたいへん楽しみな今月ですが、以前彼女と一緒にキャロライナ・チョコレート・ドロップスで活躍していたドム・フレモンズがマーティン・シンプソンと2015年秋に行った英国ツアーのライヴ・アルバムです。かつて米国を活動の拠点にしていたマーティンのこと、現代のソングスターを謳うドムとの共演には少しも違和感がありません。バンジョーやギターはもとよりボーンズやクウィルなども奏で、交互に唄い、ガス・キャノン、ヘンリー・トーマスなどのトラディショナル曲を絶妙のコンビネーションで聴かせてくれます。
ご来店の際にリクエストしてください。