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思うように新譜が届かないため9月もこの時期になってしまいましたが、カフェトラモナ9月のおすすめです。
上左:Kenny Roby / The Reservoir(2020)
生前ニール・カサールがケニー・ロビーと一緒に作ろうとしていたアルバムがやっと届きました。当然ニールの姿はありませんが、プロデュースのデイヴ・スクールズを始め、ジェシ・エイコックやジェフ・ヒル、トニー・レオンなどHard Working AmericansやChris Robinson Brotherhoodで一緒にプレイしたニールの旧友たちが集まり、ケニーをバック・アップしています。録音はケニーが大好きだというボビー・チャールズと縁の深いウッドストック。全16曲ケニー作、7年間に書き溜めた作品には結婚生活の破綻や友人の死など日常の出来事が色濃く影を落としています。特にデモを聴いたニールがまさに自分の人生だと云ったという〈Room 125〉やニール葬送の曲〈Silver Moon (For Neal)〉を含むD面は涙なしには聴けません。ティム・ハ―ディンを想わせるケニーの歌声が遣る瀬ない傑作です。
上右:Joan Shelley / Live At The Bomhard(2020)
ジョーン・シェリーの新作は昨年12月地元ケンタッキー州ルイヴィルはボンハード・シアターで収録されたライヴ・アルバム。ジョーンは、シャーリー・コリンズの新作で素晴らしいギターを聴かせてくれたネイサン・サルスバーグやジ・アザー・イアーズのアン・クリッペンステイプルを擁するベスト・ハンズ・バンドをバックに、時折ゲストのボニー・プリンス・ビリーやジュリア・パーセルの歌声を交え、新作の『Like The River Loves The Sea』を中心に16曲を唄っています。1曲あるカヴァー曲はジェイク・ホルムズが1970年『Watertown』でシナトラに書いた〈Would Be In Love (Anyway)〉の渋すぎる選曲。ケンタッキーにあってサンディ・デニーのDNAを感じさせる素敵なアルバムです。
下左:S.G. Goodman / Old Time Feeling(2020)
ケンタッキーの女性SSW、S・G・グッドマンのソロ・デビュー作。マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームズがコ・プロデュースを担当し、ルイヴィルのスタジオ、ラ・ラ・ランドで録音されています。ジョーン・シェリーを始めケンタッキーのミュージシャンが挙って参加したベネフィット・アルバム『Pine Mountain Sessions』の録音時、ジムはそのアルバムのプロデューサー、ダニエル・マーティン・ムーアから当時サヴェージ・ラドリーというバンドで活動していたグッドマンを紹介され、初めて彼女の歌声を聴いたとき魔法に懸かったそうです。アルバム制作にあたって参考にしたのがリンク・レイの『Link Wray』とのこと。それだけで聴かない訳にはいきません。
下右:June Tabor / Ashore(2011, 2018)
先のオイスター・バンドとのコラボ第3弾が素晴らしかったジューン・テイバー。オイスター・バンドやクエルクスなどグループ名義のレコーディングが続いているためソロ最新作は2011年まで遡ります。タイトルのとおり「海」に纏わる楽曲を集めたアルバムで、〈Finisterre〉や〈The Grey Funnel Line〉などかつてオイスター・バンドとのコラボやシリー・シスターズで唄った楽曲の再録音が並ぶなか、注目すべきは1982年のフォークランド紛争を唄った〈Shipbuilding〉。コステロが書き、ロバート・ワイアットがヒットさせた名曲です。84年の『Diving for Pearls』でスワン・アーケイドが唄った無伴奏コーラス・ヴァージョンが忘れられませんが、ここにジューン・テイバーが新たに名唱を加えました。
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