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カフェトラモナ12月のおすすめです。
上左: Jenny Sturgeon / The Living Mountain(2020)
ジェニー・スタージェンはスコットランドのSSW。シボーン・ミラーの後継としてソルト・ハウスに加入し、先の『Huam』(2020)ではカリン・ポルワート級の歌声を聴かせ、スコットランドのフォーク・シーンにおける彼女たちの存在感を知らしめてくれました。本作はジェニーの2ndアルバム。ソルト・ハウス加入後初めてリリースされるソロ作になります。スコットランドの国民的作家、ナン・シェパードによって書かれた山歩きのノンフィクション『The Living Mountain』にインスパイアされて生まれた作品で、アンディ・ベルのプロデュースにより著作の舞台となったケアンゴームズ国立公園で録音された全12曲のタイトルも章名から採られているとのこと。レコーディングに使われたギターはスコットランド各地のパブの棚や古い漁船から再生された木材で作られた特注ギター。そのギターにより弾き語られるジェニーの歌声がケアンゴームズでフィールド録音された小川のせせらぎや小鳥の囀りと相俟ってスコットランドの大自然に誘ってくれます。
上右:The Magpie Arc / Ep1(2020)
マグパイ・アークはマーティン・シンプソンとナンシー・カーの新しいバンドで、マーティンとナンシーのほか、エディ・リーダーやハイジ・タルボットともレコーディング歴のあるエジンバラの新進気鋭のSSW、アダム・ホームズに、ドラムスのトム・A・ライト(新生アルビオン・バンド!!)とベースのアレックス・ハンター(アダム・ホームズ&エンバーズ)を加えた5人組。完全なTrad-Arrではなく、むしろ『What We Did on Our Holidays』辺りのフェアポートを想わせるフォーク・ロックを聴かせ、ロックダウンが緩和されたこの夏に録音した12曲を3枚のEPでリリースする予定です。本作はその第1弾で、詳しくは こちら をご覧ください。
下左:Neal Casal / Fade Away Diamond Time - 25th Anniversary 2LP Edition(1995, 2020)
先月のロン・セクスミスに続きニール・カサールのデビュー・アルバムもアナログ化されました。ニール・ヤングに多分に影響されたギターのカッティング、デビュー当時のジャクソン・ブラウンを想わせるまだ青臭さを残した歌声、〈Detroit Or Buffalo〉の渋すぎるカヴァー・センスなど。針を落とすと90年代の中頃に初めてCDで聴いた時の感動が蘇ってきます。ギタリストとしての大成や『Sweeten The Distance』での成熟も捨てがたいところですが、如何してもこのデビュー・アルバムに戻って来てしまいます。もしブラック・ホークの99枚が編み直されるとしたら間違いなく選出される筈、それほどの傑作です。
下右: Various Artists / If You’re Going to the City: A Tribute to Mose Allison (2019)
2016年に89歳で亡くなったモーズ・アリソンのトリビュート・アルバム。モーズ・アリソンのトリビュートと云うとヴァン・モリソン、ジョージ・フェイム、ベン・シドランの『Tell Me Something』が直ぐに浮かびますが、こちらは『Watkins Family Hour』で気を吐いたシェルドン・ゴムバーグとドン・ヘフィントンのプロデュースで、ちょうど昨年の今頃リリースされたもの。ドンやグレッグ・リーズ、ベンモント・テンチ、セバスチャン・スタインバーグのWatkins Family Hour組をバックにジャクソン・ブラウンやフィオナ・アップルが唄います。ボニー・レイットとリチャード・トンプソンはライヴ収録。ノーム・ピケルニーのバンジョーを中心としたブルーグラス・バンドで唄われるロビー・ファルクスの〈My Brain〉は圧巻です。
A1. Your Mind Is On Vacation (Taj Mahal) / A2. My Brain (Robbie Fulks) / A3. If You Live (Jackson Browne) / A4. Your Molecular Structure (Fiona Apple) / A5. Nightclub (Ben Harper + Charlie Musselwhite)
B1. Stop This World (Chrissie Hynde) / B2. If You're Going To The City (Iggy Pop) / B3. Everybody's Crying Mercy (Bonnie Raitt) / B4. Ever Since The World Ended (Loudon Wainwright III) / B5. Parchman Farm (Richard Thompson)
C1. I Don't Worry About A Thing (Peter Case) / C2. Wild Man On The Loose (Dave Alvin & Phil Alvin) / C3. The Way Of The World (Richard Julian) / C4. Numbers On Paper (Frank Black) / C5. Monsters Of The Id (Amy Allison with Elvis Costello)
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マーティン・シンプソンとナンシー・カーの新しいバンド、The Magpie Arcのデビュー10インチ『Ep1』が彼らの住むイングランド中部のシェフィールドから届きました。
マグパイ・アークはマーティンとナンシーのほか、エディ・リーダーやハイジ・タルボットともレコーディング歴のあるエジンバラの新進気鋭のSSW、アダム・ホームズに、ドラムスのトム・A・ライト(新生アルビオン・バンド!!)とベースのアレックス・ハンター(アダム・ホームズ&エンバーズ)を加えた5人組。完全なTrad-Arrではなく、むしろ『What We Did on Our Holidays』辺りのフェアポートを想わせるフォーク・ロックを聴かせます。詳しくは こちら をご覧ください。
カフェトラモナ11月のおすすめです。
上左:Varo / Varo(2020)
ヴァロはLucie AzconagaとConsuelo Nerea Breschiの二人のシンガー兼フィドル奏者によるフォーク・デュオ。フランス出身のルーシーとイタリア出身のコンスエロはアイルランドの伝統音楽への愛情を追求するため移り住んだダブリンで2015年に出会い、一緒に活動するようになりました。本作は彼女たちのデビュー・アルバムで、〈Streets of Forbes〉にインスパイアされた自作曲〈Ben Hall's Wake 〉のほかは全てトラッド。ソースをアン・ブリッグスやジューン・テイバーなどに求めた曲があるせいか70年代のブリティッシュ・フォークの味わいも。ヘレン・ダイアモンドが加わり三声アカペラで唄われる〈The Doffing Mistress〉が素晴らしい。
上右:Sam Sweeney / Unearth Repeat(2020)
ベロウヘッドやレヴァレットで活躍するサム・スウィニーは、ジャック・ラッターやフェイ・ヒールドなどのソロ・アルバムでも素晴らしいバック・アップを披露し、今ではイングランドのフォーク・シーンで欠かすことのできないフィドラーです。本作はソロ2作目で、ギターにジャック・ラッターとルイス・キャンベル、ダブル・ベースにベン・ニコラス、ピアノとキーボードにデイヴ・マッケイを配し、プロデュースには今を時めくアンディ・ベルを起用しています。楽曲ソースのクレジットは無く、トラッドと自作曲の垣根を飛び越えているようです。ジャケ写で抱える録音に使用したフィドルはデイヴ・スォーブリックのもの。スミディー・バーンの赤い夕焼けに誘います。
下左:Eden & John's East River String Band / Live At The Brooklyn Folk Festival Vol.1(2020)
イーデン・ブロワーとジョン・へネガンのイースト・リヴァー・ストリング・バンド、7枚目の最新作です。今回は初のライヴ・アルバムで、毎年ニューヨークはブルックリンの聖アン教会で開催されているブルックリン・フォーク・フェスティヴァルに出演した際の2010年から2018年までの選りすぐりの音源が収録されています。バンド・メンバーはイーデンとジョンのほか、ロバート・クラムと昨年Jalopy Traveling Folk Festivalで来日したアーネスト・ゴメス。スペシャル・ゲストにはパット・コンテ、イーライ・スミス、ジャクソン・リンチ、ウォーカー・シェパードなどがクレジットされ、ジャロピー・レコード総出でバック・アップしています。今からVol.2が待ち遠しい一枚です。
下右:Ron Sexsmith / Ron Sexsmith(1995, 2020)
1995年に発表されたロン・セクスミスのデビュー・アルバムがリリース25周年を記念してアナログ化されました。もともと名盤の誉れ高い本作にはこれまでCDでは最後にダニエル・ラノアがプロデュースした〈There's a Rhythm〉が本編とダブって収録されていましたが、今回のアナログ化に際してこのトラックが削られ、ロンが当初構想したトラックリストに戻されたとのこと。A面はアコースティック・ギターとチェロのアンサンブルが美しい、生まれたばかりの息子について唄った〈Speaking with the Angel〉で終わり、B面は育った路地の思い出〈Galbraith Street〉をアルバム唯一の弾き語りで締め括るという、いかにもSSWの名盤らしい構成の復元です。発表当時エルヴィス・コステロに「この先20年は聴き続けられるアルバム」と評価された本作、20年と云わず、あの『ブルー・リヴァー』と並ぶSSWの名盤としてレコード棚にいつまでも燦然と輝き続けるでしょう。
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カフェトラモナ10月のおすすめです。
上左:Shirley Collins / Heart's Ease(2020)
2016年の『Lodestar』に続くシャーリー・コリンズの復活第2作が届きました。プロデュースのイアン・キアリー(元Oysterband)や脇を固めるアルビオン・モリスのジョン・ウォッチャム、ラトル・オン・ザ・ストーヴパイプのデイヴ・アーサーとピート・クーパーなどのバックの面子はほぼ変わりありませんが、今回はスタジオ録音。リラックスできるようにとシャーリーの自宅で録音された「暫定的」な前作に比べ、シャーリーの復活劇は本格的に幕が開けられたようです。
詳しくは こちら をご覧ください。なお〈Locked in Ice〉の作者であるバズ・コリンズのソロやアルビオン・モリス、ラトル・オン・ザ・ストーヴパイプのアルバムもコレクションしています。興味のある方はどうぞリクエストしてください。
上右:Stick in the Wheel / Hold Fast(2020)
『English Folk Field Recordings』Vol.1, 2(2017, 2019)やBelinda Kempster & Fran Foote『On Clay Hill』(2019)、Jack Sharp『Good Times Older』(2020)など素晴らしいアルバムのリリースが続いているFrom Here Records。その中心的存在であるStick In The Wheelから3枚目のアルバムが届きました。スティック・イン・ザ・ホィールは女性シンガーのニコラ・キアリーとプロデュースとバック・トラックを担当するイアン・カーターの二人組。今回はこのふたりに女性ドラマーのシャーン・モナハンと1曲だけあのジョン・カークパトリックがメローディオンで加わっています。やはり気になるのはジョン・カークの参加した〈Budg & Snudg〉。18世紀まで死刑が執行されていたロンドンのタイバーン処刑場について唄った古謡で、悪名高いニューゲート刑務所の劣悪な環境で生き残ろうとする窃盗犯の日常を唄うにはジョン・カークの重いモリスのリズムが必要だったとか。他にキプリングの詩にピーター・ベラミーが曲を付けた〈Soldier Soldier〉も収録。
下左:Cinder Well / No Summer(2020)
シンダー・ウェルはカリフォルニア生まれのアメリア・ベイカーのワンマン・プロジェクト。一緒にツアーをしたLankumの影響でアイルランド音楽を学ぶためにクレア州に移り住んだと云います。3作目の本作はワシントン州の古い教会を改築したスタジオでニッチ・ウィルバーによって録音され、メンバーはヴィオラ、コーラスのマリット・シュミットとヴァイオリン、コーラスのメイ・ケスラーのふたりが加わるのみで、自身の弾くギター、オルガン、フィドルが硬質なアメリアの歌声を際立てています。全9曲中、ロスコー・ホルコムをお手本にした〈Wandering Boy〉やジーン・リッチーの〈The Cuckoo〉、フィドル・チューンの〈Queen of the Earth, Child of the Skies〉のトラッド3曲以外はすべて自作曲。中でもタイトル曲〈No Summer〉はコロナ禍の夏を予見したかのようです。
下右:小坂忠とFour Joe Half / ロック・ソサエティ・ウラワ 1972夏の陣(2020)
小坂忠、駒沢裕城、松任谷正隆、後藤次利、林立夫というまだダイヤモンドの原石だった5人の若者が揃って活動していたのは1972年の1年足らず。これまで小坂忠2nd『もっともっと』、CDボックス『1972春一番』と2種のライヴ音源がリリースされていますが、今回1972年8月26日浦和の埼玉会館大ホールでの音源が発掘されました。『もっともっと』が3月30日の実況録音ですから約5か月後の少しワイルドなFour Joe Halfの演奏が堪能できます。若干ベース音が抑え気味ながらも録音は良く、〈春を待ってる私はこたつの中〉や〈どろんこまつり〉でのピアノとペダル・スティールのスリリングな絡みにゾクゾクさせられます。
ご来店の際にリクエストしてください。