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2020-09-13 12:02:00
カフェトラモナ9月のおすすめレコード

思うように新譜が届かないため9月もこの時期になってしまいましたが、カフェトラモナ9月のおすすめです。

 

上左:Kenny Roby / The Reservoir(2020)

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生前ニール・カサールがケニー・ロビーと一緒に作ろうとしていたアルバムがやっと届きました。当然ニールの姿はありませんが、プロデュースのデイヴ・スクールズを始め、ジェシ・エイコックやジェフ・ヒル、トニー・レオンなどHard Working AmericansやChris Robinson Brotherhoodで一緒にプレイしたニールの旧友たちが集まり、ケニーをバック・アップしています。録音はケニーが大好きだというボビー・チャールズと縁の深いウッドストック。全16曲ケニー作、7年間に書き溜めた作品には結婚生活の破綻や友人の死など日常の出来事が色濃く影を落としています。特にデモを聴いたニールがまさに自分の人生だと云ったという〈Room 125〉やニール葬送の曲〈Silver Moon (For Neal)〉を含むD面は涙なしには聴けません。ティム・ハ―ディンを想わせるケニーの歌声が遣る瀬ない傑作です。 

 

上右:Joan Shelley / Live At The Bomhard(2020)

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ジョーン・シェリーの新作は昨年12月地元ケンタッキー州ルイヴィルはボンハード・シアターで収録されたライヴ・アルバム。ジョーンは、シャーリー・コリンズの新作で素晴らしいギターを聴かせてくれたネイサン・サルスバーグやジ・アザー・イアーズのアン・クリッペンステイプルを擁するベスト・ハンズ・バンドをバックに、時折ゲストのボニー・プリンス・ビリーやジュリア・パーセルの歌声を交え、新作の『Like The River Loves The Sea』を中心に16曲を唄っています。1曲あるカヴァー曲はジェイク・ホルムズが1970年『Watertown』でシナトラに書いた〈Would Be In Love (Anyway)〉の渋すぎる選曲。ケンタッキーにあってサンディ・デニーのDNAを感じさせる素敵なアルバムです。

 

下左:S.G. Goodman / Old Time Feeling(2020)

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ケンタッキーの女性SSW、S・G・グッドマンのソロ・デビュー作。マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームズがコ・プロデュースを担当し、ルイヴィルのスタジオ、ラ・ラ・ランドで録音されています。ジョーン・シェリーを始めケンタッキーのミュージシャンが挙って参加したベネフィット・アルバム『Pine Mountain Sessions』の録音時、ジムはそのアルバムのプロデューサー、ダニエル・マーティン・ムーアから当時サヴェージ・ラドリーというバンドで活動していたグッドマンを紹介され、初めて彼女の歌声を聴いたとき魔法に懸かったそうです。アルバム制作にあたって参考にしたのがリンク・レイの『Link Wray』とのこと。それだけで聴かない訳にはいきません。

 

下右:June Tabor / Ashore(2011, 2018)

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先のオイスター・バンドとのコラボ第3弾が素晴らしかったジューン・テイバー。オイスター・バンドやクエルクスなどグループ名義のレコーディングが続いているためソロ最新作は2011年まで遡ります。タイトルのとおり「海」に纏わる楽曲を集めたアルバムで、〈Finisterre〉や〈The Grey Funnel Line〉などかつてオイスター・バンドとのコラボやシリー・シスターズで唄った楽曲の再録音が並ぶなか、注目すべきは1982年のフォークランド紛争を唄った〈Shipbuilding〉。コステロが書き、ロバート・ワイアットがヒットさせた名曲です。84年の『Diving for Pearls』でスワン・アーケイドが唄った無伴奏コーラス・ヴァージョンが忘れられませんが、ここにジューン・テイバーが新たに名唱を加えました。

 

ご来店の際にリクエストしてください。

2020-08-09 14:16:00
カフェトラモナ8月のおすすめレコード

カフェトラモナ8月のおすすめです。

 

上左:Bob Dylan / Rough And Rowdy Ways(2020)

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『Tempest』以来8年ぶりのオリジナル・アルバム。久しく聴くことができなかったディランの新曲はやはり凄い。6月19日の配信解禁以来ずっとストリーミングしていましたが、先月の終わりにやっとアナログ盤が届きました。暫くは唯々耳を傾けるばかりです。

 

上右:The Unthanks / Live and Unaccompanied - Diversions Vol. 5(2020) 

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ジ・アンサンクスはイングランドは北東端のノーサンバーランド出身のレイチェルとベッキーのアンサンク姉妹を中心とした5人組。ディヴァージョンズ・シリーズ(寄り道シリーズ?)はオリジナル・アルバムと云うよりも企画もの的なシリーズで、過去にはロバート・ワイアットやモリー・ ドレイク(ニックの母親です)のトリビュート・アルバムなどをリリースしています。本作はそのシリーズの5作目で、昨年の春のUnaccompanied, As We Areツアーの模様を収録したもの。昨年のツアーは姉妹にメンバーのニオファ・キーガンを加えた女声トリオのみによる無伴奏ツアーで、英国とアイルランドの31か所を巡ったなかから選りすぐりの13曲が収められています。なかでも〈Magpie〉は秀逸。詳しくは こちら をご覧ください。

 

下左:Anne Briggs / An Introduction to Anne Briggs(2018)

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トピック・レコードの主要ミュージシャンを紹介するイントロダクション・シリーズのうちの一枚。A面には『The Iron Muse 』や『The Bird in the Bush 』のアンソロジーとアン・ブリッグス名義のEP『The Hazards of Love 』から2曲ずつ、B面にはトピック唯一のソロ作『Anne Briggs 』から5曲、録音後直ぐにリリースされず1996年に日の目を見た『Sing a Song for You』から1曲、全12曲が年代順に収められています。既にリリース済みのものばかりで目新しさはありませんが、この並びで聴くのも一興。ジャケットは『The Iron Muse 』録音時のワン・ショット。美しいです。

 

下右:Martyn Wyndham-Read / A Rose from the Bush(1984)

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『Live and Unaccompanied』終盤で唄われる〈Caught in a Storm〉はアンサンクスが好んで取り上げるソング・ライター、グレイム・マイルズの楽曲です。そのマイルズを「the world champion songwriter」と賛辞し、数多く唄うシンガーにマーティン・ウィンダム・リードがいますが、本作はウィンダム・リードがマイルズ曲を初めて取り上げたアルバム。マーティン・カーシー、ジョン・カークパトリックらをバックに〈The Opal Beds of Australia〉と〈Otago〉の2曲をいつもながら朗々と唄っています。この後ウィンダム・リードはアルバム毎にマイルズ曲を取り上げ、2001年にはマイルズ集『Where Ravens Feed - Songs by Graeme Miles』をリリーします。A・L・ロイドの『Leviathan!』や『The Great Australian Legend』など歴史的名盤に参加し、ソロ作も本作をはじめ『Ned Kelly and That Gang』『Ballad Singer』『Emu Plains』などどれも充実のマーティン・ウィンダム・リードは今も現役。いつか紹介したかったシンガーのうちの一人です。

 

ご来店の際にリクエストしてください。

2020-07-31 12:41:00
The Unthanks『Live and Unaccompanied』が届きました。

昨年秋のDJ Hourで中川五郎さんもプリテンダーズをカヴァーしたジ・アンサンクスの〈2000 Miles〉を紹介してくださいましたが、そのアンサンクスの新作『Live and Unaccompanied』が届きました。無伴奏アルバムながら素晴らしいのでご紹介します。こんなアルバムがリリースされるイングランドのフォーク・シーンからはやはり目が離せませんね。

 

本作は彼女たちのディヴァージョンズ・シリーズの5作目で、この5月にリリースされた最新作。いつもはレイチェルとベッキーのアンサンク姉妹にプロデューサーでピアニストのエイドリアン・マクナリー、ベースとギターのクリス・プライス、ヴァイオリンのニオファ・キーガンを加えた5人でライブを行うアンサンクスですが、 「Unaccompanied, As We Are」と名付けられた昨年の春のツアーは少し異なっていました。姉妹にニオファを加えた女声トリオのみによる無伴奏ツアーで、英国とアイルランドの31か所を巡ったなかから選りすぐりの13曲が収められています。 

 

13曲中トラッドは3曲、他にコニー・コンヴァース、デイヴ・ドッヅ、ピーター・ベラミー、ジョニー・ハンドル、モリー・ドレイク、リチャード・ドウソン、グレイム・マイルズなど渋めのソング・ライターの楽曲が並ぶさまは流石アンサンクスと云ったところです。 

 

詳しくは「Vinyl and so on/arrival」をご覧ください。

2020-07-08 14:01:00
カフェトラモナ7月のおすすめレコード

カフェトラモナ7月のおすすめです。

コロナ禍下の郵便事情により思うようにレコードが届かず急遽変更しておすすめします。

 

上左:Neil Young / Homegrown(2020)

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ニール・ヤングの新譜、と云っても1975年に制作され未発表となっていたアルバムのリリースです。初めはストリーミングでスルーしようとしたのですがリヴォン・ヘルムのドラムに如何しても抗うことができずアナログ盤に手を出してしまいました。ベン・キースのペダル・スティール、ティム・ ドラモンドのベース、そしてニールのハーモニカと『Harvest』感が満載。後にクレイジー・ホースとの演奏で日の目を見た〈White Line〉もここではロビー・ロバートソンとロンドンで二人きりの録音。感動ものです。

 

上右:Brian Wilson & Van Dyke Parks / Orange Crate Art(1995, 2020)

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ヴァン・ダイク・パークスがブライアン・ウィルソンと組んでリリースした『Orange Crate Art』が発表25周年を記念してアナログ化されました。当初ヴァン・ダイクはブライアンに共同の曲作りも誘ったようですが、ブライアンはこれを固辞。ヴォーカルとコーラスに専念し、最終的にヴァン・ダイクの作品にブライアンがシンガーとして全面参加する格好になりました。元々の本編12曲を今回アナログ盤2枚組のA、B、C面に4曲ずつで収録し、残ったD面には未発表音源3曲が収められています。ガーシュインの〈Rhapsody In Blue〉と〈Love Is Here To Stay〉、ルイ・アームストロングの〈What A Wonderful World〉で、秀逸です。

 

下左:The Eighteenth Day Of May / The Eighteenth Day Of May(2005, 2020)

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エイティーンス・デイ・オブ・メイはトンプソン・スウォーブ期のフェアポートや初期のスティーライ、更にはヴェルヴェッツやバーズ辺りもお手本にし、2005年ハンニバルからデビューしたエレクトリック・トラッド・バンド。確かに11歳の頃から地元のフォーク・クラブで演奏していたというベン・フィリップソンのギターがトンプソンを想わせます。唯一のアルバムに2ndに用意した音源を加え2枚組アナログ盤としてこの5月18日にリリースされました。現在メンバーの殆どはTrimdon Grange Explosionというバンドで活躍中とのこと。バンド名をイングランドのトリムドン・グランジで起きた炭鉱爆発事故を題材にしたバラッドから取って来るところなど頼もしいかぎり。そんな意気込みの若く溌溂とした歌声をお楽しみください。

 

下右:The Spectral Light and Moonshine Firefly Snakeoil Jamboree / Scarecrow Stuffing & Burning Mills(1999, 2004)

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スペクトラル・ライト・アンド・ムーンシャイン・ファイアフライ・スネイクオイル・ジャンボリーはペンシルベニアの摩訶不思議なバンドです。前世紀末の米国でインクレディブル・ストリング・バンドのトリビュート・アルバムをリリースするというような殊勝な心がけのティモシー・レナーを中心にした3人組で、本作は2nd『Burning Mills』がリリースされた際に1st『Scarecrow Stuffing』と一緒にアナログ化された2枚組。そのインクレディブル・ストリング・バンドがモロッコとブルガリアを経由せずにアパラチアに留まったようなトラッドを聴かせてくれます。

 

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2020-05-31 14:57:00
カフェトラモナ6月のおすすめレコード

カフェトラモナ6月のおすすめです。

 

上左:Frazey Ford / U kin B the Sun(2020)

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元ビー・グッド・タニヤスのフレイジー・フォードのソロ3作目です。2014年の前作『Indian Ocean』はメンフィスのロイヤル・スタジオに赴き録ったハイ・サウンドの響きが心地よいソウルフルなアルバムでしたが、今回は地元ヴァンクーヴァーに戻っての録音。ここにはハイ・リズム・セクションやホーン・セクションはありませんが、共同プロデューサーのジョン・ラハムを始めとするツアー・バンドが大健闘。前作に勝るとも劣らないフォーキーかつソウルフルなアルバムに仕上がりました。蛇足ながらフレイジーは本作に先立ってディアンジェロやファンカデリックをカヴァーして配信しています。

 

上右:James Elkington / Ever-Roving Eye(2020)

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ジェイムズ・エルキントンは英国出身で現在はシカゴで活躍するSSW/ギタリスト。ジェフ・トウィーディ、プロデュースのリチャード・トンプソン『Still』にはギタリストとして参加していました。本作はソロ2作目で、英国のオンライン・マガジン『Folk Radio』のディスク・レビューではB・ヤンシュ、N・ドレイク、D・グラハム、S・アシュレイなどブリティッシュ・フォークのレジェンドやヴァーチュオーゾを数多く掲げ本作を紹介していますが、なるほど一聴して想い起すのがペンタングル。ジェイムズの卓越したギター・ワークにニック・マクリのウッド・ベースが拍車をかけています。全曲自作、録音はウイルコの"ロフト"で行われています。

 

下左:Serious Child / Time In The Trees(2020)

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英国のSSW、シリアス・チャイルドことアラン・ヤングの2作目。サセックスの森の中で過ごした1年間の生活を歌に綴ったアルバムで、デビュー作と同様にブー・ヒュワディーンが制作し、ブーの穏やかなプロダクションがスコット・ウォーカーを想わせるアランの歌声を際立てています。中でもジョン・マッカスカーとベサニー・ポーターが参加した〈The Oak〉はトラディショナルなアイリッシュ・フレイバーを感じさせる名曲で、ジョン・ボーデン辺りのトラッド・シンガーに歌って貰いたいほどです。またBBC放送で紹介された盆栽師 山本千城子さんにインスパイアされた〈Bonsai〉なんて曲もあります。

 

下右:Karen Dalton / Recording is the Trip – The Karen Dalton Archives(2020)

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これまで何回も発売が延期されていたカレン・ダルトンのボックスがやっと到着しました。既にCDでリリースされている62年のライヴ盤『Cotton Eyed Joe』と63年のホーム・レコーディング音源集『Green Rocky Road』の初アナログ化です。この2枚のアルバムのリマスター盤3LP/3CDがメインで、これにブックレットとTシャツが付属しています。当初予定されていたDVDと未発表音源CDは付いておらず、未発表音源13曲がダウンロードできるようになっています。その未発表音源ですが、『Green Rocky Road』のアウトテイクで、既出の〈In the Evening〉で少し聴かれたジョー・ループのドラムが大きくフィーチャーされ、リチャード・タッカーがサックスを吹いているのが肝でしょう。ディランから「ビリー・ホリデイのような歌声」と云われていたカレンのこと、あって当然のジャージーなアプローチと思われます。

   

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