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カフェトラモナ10月のおすすめです。
上左:Marry Waterson & Oliver Knight / 10th Anniversary Edition(One Little Independent Records, 2021)
マリー・ウォーターソンとオリヴァー・ナイトのデビュー・アルバム『The Days That Shaped Me』がリリースされたのは2011年の春。ブリティッシュ・フォークの金字塔的名盤と評されたそのアルバムがリリース10周年を記念してレコード・ストア・デイのアイテムとしてアナログ化されました。真っ赤なレコードの2枚組で、A、Bの両面とC面の前半にオリジナルの14曲が、C面後半とD面にはアンディ・カッティングとオリヴァーによるインストを含む7曲のボーナス・トラックが収録されています。極めつけはラル・ウォーターソンの名曲〈Fine Horseman〉のカヴァーでしょう。この9月4日に24回目の命日を迎えた母親の偉大な遺志を二人の姉と弟が確りと受け継いでいるのが分かります。
上右:Henry Parker / Silent Spring(Self-released, 2019)
ヘンリー・パーカーはウェスト・ヨークシャー出身のSSW/ギタリスト。幼い頃からブラック・サバスやスレイヤーなどハードロックやヘヴィメタを聴いて育ったそうですが、リーズ大学在学中に出会ったバート・ヤンシュの1stアルバムがそれまでの音楽的嗜好を劇的にフォーク・ミュージックにシフトさせたとのこと。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』にインスパイアされたタイトル曲を含む本作は2019年のデビュー・アルバムで、かつてバートが取り上げたトラッド曲、『Rosemary Lane』収録の〈Sylvie〉とペンタングル時代の〈Willie O Winsbury〉をカヴァーしています。バートやジョン・レンボーンに通じる卓越したギターとオーガスティン・ボスフィールドの弾くダブル・ベースのスリリングなアンサンブルがペンタングルを想わせますが、内省的な歌声はむしろニック・ドレイク。近年稀にみるSSWアルバムの傑作です。
下左:Tim Easton / You Don't Really Know Me(Black Mesa Records, 2021)
ナッシュヴィルのSSW、ティム・イーストンの10枚目のスタジオ・アルバム。プロデュースはブラッド・ジョーンズ&ロビン・イートンで、1998年のデビュー・アルバム『Special 20』を制作したコンビネーションが蘇りました。もちろん録音はアレックス・ザ・グレート・スタジオ。このところ弾き語りアルバムが続いたティムですが、今回は確りとバンド編成でかつてのティム・イーストンが戻ってきたようです。パンデミックの中で書かれた楽曲はこれまでになく自伝的とか。昨年亡くなった二人のソングライター、ジョン・プラインとジャスティン・タウンズ・アールに捧げられた〈Voice On The Radio〉と〈River Where Time Was Born〉が特に印象的です。
下右:Laura Nyro / Go Find The Moon-The Audition Tape(Omnivore Recordings, 2021)
デビュー作『More Than A New Discovery』に先立つ1966年、18歳のローラ・ニーロが受けたミルト・オークンとアーティ・モーグルのオーディション音源のリリースです。1stの〈And When I Die〉〈Lazy Susan〉や2ndに収められる〈Luckie〉の初期ヴァージョン、未発表の〈Enough Of You〉〈In And Out〉〈Go Find The Moon〉の自作曲のほか、「何かポップスを」と促されて数小節口遊んだ〈When Sunny Gets Blue〉〈Kansas City〉〈I Only Want To Be With You〉などが収録されていますが、どの曲を取っても後に私たちが知ることになるローラ・ニーロは既に出来上がっていたようです。なお〈And When I Die〉と〈Lazy Susan〉は2004年の歌詩集『Lyrics & Reminiscences』付属のCDのものと同じ音源と思われます。
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九州福岡のお客様、Mさんから"ジョナー・トルチンの『Fires for the Cold』と並ぶ名盤"と教えていただいたヘンリー・パーカーの『Silent Spring』が届きました。
ヘンリー・パーカーはウェスト・ヨークシャー出身のSSW/ギタリスト。幼い頃からブラック・サバスやスレイヤーなどハードロックやヘヴィメタを聴いて育ちましたが、リーズ大学在学中に出会ったバート・ヤンシュの1stアルバムがそれまでの音楽的嗜好を劇的にフォーク・ミュージックにシフトさせたとのこと。マイケル・チャップマン、ウィズ・ジョーンズ、ブリジット・セント・ジョン、ソフト・マシーンなどのサポート・ワークをしながら、ソロ活動を続け、この11月には2ndアルバムもリリースされる予定です。
レイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』にインスパイアされた〈Silent Spring〉をタイトル曲にした本作は2019年のデビュー・アルバムで、プロデュースはピート・コーやスティーヴ・ティルストンで知られるデヴィッド・クリックモア。バックにはオーガスティン・ボスフィールド(ダブル・ベース)、ブレンダン・バチェ(ドラムス)、セオ・トラヴィス(フルート)等を配し、特にソフト・マシーンのセオによるフルートが要所要所で良い仕事をし、程よいアシッド感を醸しています。
生前のバートのライヴ・パフォーマンスには間に合わなかったようですが、本作ではかつてバートが取り上げたトラッド曲を2曲カヴァー。1曲は『Rosemary Lane』の〈Sylvie〉、もう1曲はペンタングル時代の〈Willie O Winsbury〉。バート・ヤンシュやジョン・レンボーンに通じる卓越したギターとボスフィールドのダブル・ベースのスリリングなアンサンブルがペンタングルを想わせますが、内省的な歌声はむしろニック・ドレイク。確かに近年稀にみるSSWアルバムの傑作です。(Mさんありがとう。)
蛇足ながらヘンリーの無人島レコードはウォータソンズの『A Yorkshire Garland』とのこと。頼もしい限りです。
Henry Parker – Silent Spring
Not On Label (Henry Parker self-released), 2019
A1. New Mantras 3:51
A2. Silent Spring 4:11
A3. False Guidance 4:35
A4. Sylvie 4:39
A5. Door Walk Blues 3:06
B1. Drive East 4:34
B2. Marbled Wren 4:38
B3. Days In A Dream 3:24
B4. Prospect Of Wealth 2:29
B5. Willie O Winsbury 5:16
Vinyl edition of 239
Henry Parker: Vocals, Guitars, Morris Drum
Augustin Bousfield: Double Bass, Harmonium
Brendan Bache: Drum Kit, Congas, Shaker
Theo Travis: Flute
David Crickmore: Fender Rhodes, Morris Drum
Produced and engineered by David Crickmore
Mastered by Neil Ferguson
All songs © Henry Parker 2019
All songs written by Henry Parker, except tracks A4 & B5, traditional arr. Henry Parker
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カフェトラモナ9月のおすすめです。
上左:David Wiffen / At The Bunkhouse Coffeehouse(Mapache Records, 2021)
カナダのSSW、デヴィッド・ウィフェンがデビュー前の1965年公演先のヴァンクーヴァーで自主制作したアルバムの初リイシュー盤です。ライヴ録音ではなく、バンクハウス・コーヒーハウスの近くの小さなスタジオで3時間で録り終え、100枚ほどプレスしたとのこと。イアン・タイソンの〈Four Strong Winds〉で幕を開けるアルバムには自作曲の〈Slice Of Life〉を始め、1stアルバムではピアノ伴奏で唄われる〈Since I Fell For You〉のギター・ヴァージョン、英国出身のウィフェンらしくロニー・ドネガンのレパートリーから〈Times Are Getting Hard〉など全11曲。注目すべきはジェシ・コリン・ヤングが『The Soul Of A City Boy』で唄ったロビン・リメイリーの〈Four In The Morning〉。その後〈More Often Than Not〉〈Driving Wheel〉など名曲の数々を生み出すウィフェンの原点です。
上右:Cold Diamond & Mink / From Us To You...With Love(Timmion Records, 2021)
ジェブ・ロイ・ニコルズとコールド・ダイアモンド&ミンクとの組み合わせによるジェブ・ロイの新作『Jeb Loy』は、ソウル・ミュージックへの揺るぎないリスペクトを持つ2組のミュージシャンたちが出会うべくして出会い生まれた傑作でした。近年心あるソウル・ファンの衆目を集めるフィンランドのレーベル、ティミオン・レコーズのハウス・バンド、コールド・ダイアモンド&ミンクの2ndは『Jeb Loy』のインスト集。ジェブ・ロイの歌声で聴き馴染んだメロディが『Jeb Loy』と同じ順で並び、ユッカ・サラッパ(Drums)とサミ・カンテリネン(Bass)の鉄壁のリズム・セクションをバックにセッポ・サルミのギターが自在に唄います。
下左:Steve Dawson's Funeral Bonsai Wedding / Last Flight Out(Kernel Sound Recordings, 2020)
スティーヴ・ドーソンはシカゴを拠点に活躍するフォーク・ロック・バンド、ドリー・ヴァーデンのフロントマン。新作の『At The Bottom Of A Canyon In The Branches Of Tree』がリリースされたばかりですが、こちらは2014年に立ち上げた別プロジェクトのフューネラル・ボンサイ・ウェディングによる昨年の2nd。ドーソンのアコースティック・ギター弾き語りと、シカゴのジャズ・ヴィブラフォン奏者ジェイソン・アダシェヴィッツのトリオとのコラボに、本作ではカルテット・パラプリュイによる弦楽四重奏が加わり、カントリー・ソウルな歌声に纏わりつくヴァイブやストリングスの音の重なりはクールでいてスリリングです。
下右:Various Artists / Migrating Bird - The Songs of Lal Waterson(Honest Jon's Records, 2007)
ラル・ウォーターソンのトリビュート盤と云えばディック・ゴーハンやマーティン・カーシーなど英国フォーク界の重鎮たちが参加したトピックの『Shining Bright』が想い起されその圧倒的な出来に納得させられますが、Honest Jon'sの6曲入りEP盤は意外性の一枚。アラスデア・ロバーツやナンシー・エリザベス、ジェイムズ・ヨークストンなどは未だしもヴィクトリア・ウィリアムスやマイケル・ハーレーの米国勢が参加し、同時リリースのCDには嬉しい驚きのジェブ・ロイ・ニコルズも。大丈夫かと思いきや各々の個性に合わせた抜群の選曲で実にしっくりした歌声を聴かせてくれます。トラッドや英国フォークの枠の中で捉えがちなラルの音楽的な多様性に思い至るアルバムです。
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Marry Waterson & Oliver Knight / The Days That Shaped Me (10th anniversary RSD reissue)(2021)
マリー・ウォーターソンとオリヴァー・ナイトのデビュー・アルバム『The Days That Shaped Me』がリリースされたのは2011年の春。ブリティッシュ・フォークの金字塔的名盤と評されたそのアルバムがリリース10周年を記念してレコード・ストア・デイのアイテムとしてアナログ化されました。真っ赤なレコードの2枚組で、A、Bの両面とC面の前半にオリジナルの14曲が、C面後半とD面にはアンディ・カッティングとオリヴァーによるインストを含む7曲のボーナス・トラックが収録されています。極めつけはラル・ウォーターソンの名曲〈Fine Horseman〉のカヴァーでしょう。この9月4日に24回目の命日を迎える母親の偉大な遺志を二人の姉と弟が確りと受け継いでいるのが分かります。
ご来店の際にリクエストしてください。
Steve Dawson's Funeral Bonsai Wedding / Last Flight Out(Kernel Sound Recordings, 2020)
スティーヴ・ドーソンはシカゴを拠点に活躍するフォーク・ロック・バンド、ドリー・ヴァーデンのフロントマンで、2003年に奥方のダイアン・クリスチャンセンとリリースした『Duets』は、もしブラックホークの99選が編み直されるとしたら是非入れたいほどの傑作でした。新作の『At The Bottom Of A Canyon In The Branches Of Tree』がリリースされたばかりですが、本作は2014年に立ち上げた別プロジェクト、フューネラル・ボンサイ・ウェディングによる昨年の2ndです。
フューネラル・ボンサイ・ウェディングはドーソンのアコースティック・ギター弾き語りと、シカゴのジャズ・ヴィブラフォン奏者ジェイソン・アダシェヴィッツのトリオとのコラボレーション。1stリリース時にはジョン・マーティンの『Solid Air』やヴァン・モリソンの『Astral Weeks』が引き合いに出されレビューされていました。更に本作ではカルテット・パラプリュイによる弦楽四重奏が加わり、カントリー・ソウルな歌声に纏わりつくヴァイブやストリングスの音の重なりはクールでいてスリリングです。
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