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カフェトラモナ12月のおすすめです。
上左:Jeb Loy Nichols / The United States Of The Broken Hearted(On-U Sound, 2022)
ジェブ・ロイ・ニコルズの最新作は盟友エイドリアン・シャーウッドのプロデュースでOn-Uサウンドからのリリース。この組み合わせは2010年の『Long Time Traveller』以来ですが、この時ほどレゲエ、レゲエしていません。寧ろレゲエを含めカントリー、フォーク、ジャズ、ソウルなど様々な音楽的要素を咀嚼した音作りは名作『Lovers Knot』を想わせます。全12曲中サラ・オーガン・ガニングの〈I Hate The Capitalist System〉、ガスリーの〈Deportees〉、カントリー・クラシックの〈Satisfied Mind〉のほかは自作曲。〈I'm Just A Visitor〉はフェロウ・トラヴェラーズ時代の再演になります。アルバム・タイトルといい、カヴァー曲といい、ジェブは母国アメリカを憂えているのでしょうか。エイドリアン曰くジェブの「グレート・アメリカン・ソングブック」だそうです。
上右:Hannah Read and Michael Starkey / Cross The Rolling Water(Hudson Records, 2022)
SSWでフィドラーのハンナ・リードはブルックリンに住むスコットランド人。前作の『Way Out I’ll Wander』はニューハンプシャーとニューヨークで録られたSSWアルバムでしたが、今回はエジンバラを拠点とするバンジョー奏者マイケル・スターキーとの共演盤です。ハドソン・レコードのアンディ・ベルのプロデュースで録音こそスコティッシュ・ボーダーズですが、フィドラーとバンジョー奏者の視線は遥かアパラチアの彼方。アルバムは米国議会図書館に残された黒人フィドラー、ジョン・ラスクの録音から学んだ〈Apple Blossom〉で始まり、スターキー作〈Blue River〉やクライド・ダヴェンポートの〈Johnny Come Along〉などインスト中心。エジンバラで開かれたアパラチアン・オールド・タイム・セッションで出会ったという二人らしい選曲です。数少ない唄もののうち〈Shenandoah〉はアナイス・ミッチェルの作品。讃美歌を想わせるメロディに魅かれたというハンナの歌声の得も言われぬ美しさは聴きどころの一つです。
下左:Tré Burt / You, Yeah, You(Oh Boy Records/Thirty Tigers, 2021)
トレ・バートはサクラメント出身の黒人SSW。ジョン・プラインに見い出されてセルフ・リリースしていた1st『Caught It From The Rye』が2020年にオー・ボーイからリイシューされデビューしました。本作はノースカロライナのダーラムで録られた2nd。あるインタビューでエリザベス・コットン、リッチー・ヘヴンス、タウンズ・ヴァン・ザントなどからの影響を語っていますが、プラインからの影響も隠せません。本作収録の〈Dixie Red〉はプラインへのオマージュ。南部産の桃であるデキシーレッドがプラインの〈Spanish Pipedream〉を想起させ、歌詞に散りばめられた"パラダイス"や"ドナルド&リディア"、"グリーンリヴァー"などがケンタッキー州ミューレンバーグ郡のパラダイスへ誘います。さぞプラインも己の遺産が確りと継承されているのに天国のThe Tree Of Forgivenessでほくそ笑んでいることでしょう。
下右:The Watersons / Frost And Fire: A Calendar of Ritual and Magical Songs(Topic Records, 2022)
1965年の歴史的名盤のリイシューです。幼い時に両親を失いアイルランドのトラヴェラーの血を引く祖母に育てられたノーマ、マイク、ラルのウォータソン姉弟がはとこのジョン・ハリソンを加え結成したザ・ウォータソンズ のデビュー作はその年のメロディ・メイカー誌の最優秀フォーク・アルバムに輝きました。地元ヨークシャーに伝わる「季節・農作業・祭礼の歌」を集めたアルバムには後にアルビオン・カントリー・バンド、トラフィック、スティーライ・スパンに唄われる〈Hal-an-Tow〉〈John Barleycorn〉〈Wassail Song〉が収められ、フェアポート加入前のサンディ・デニーも〈Seven Virgins〉〈The Sans Day Carol〉をレパートリーにしています。1990年、2007年にCD化され、3回目のリイシューですが、今回は45回転のアナログ盤1枚でのリリース。A、B両面で30分ほどの収録時間で内容も無伴奏歌唱であることから圧縮すべき情報量が少なく45回転が可能になったようで、月並みですが4人が同じ部屋にいてすぐそばで唄ってくれるような臨場感です。
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