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英国のフォーク・シンガー、リサ・ナップの新作が届きました。前作はマリー・ウォーターソンとナサニエル・マンと3人で組んだハックポエッツ・ギルドの『Blackletter Garland』でしたが、今回は夫君ジェリー・ダイヴァーとの共同アルバム『Hinterland』が届きました。どうぞお楽しみください。
Lisa Knapp & Gerry Diver『Hinterland』Ear to the Ground Music, 6 March 2025
リサ・ナップの新作はこれまでプロデュースやマルチ奏者としてリサの音楽を裏方で支えてきた夫君のジェリー・ダイヴァーとの共同名義でリリースされたアルバムです。2曲のフィドルのインストを含む全9曲。唄ものでは〈Train Song〉と〈Star Carr〉の2曲がオリジナルで、5曲がトラッド。全てリサが唄い、二人のほかはベロウヘッドのピート・フラッドがドラムとパーカッションで4曲に参加しているのみです。
ピーター・ケネディが蒐集したリアム・オコナーの歌唱をお手本にしたアイリッシュ〈Hawk & Crow〉で始まるA面は2曲の自作曲を挟み、ナイト・ヴィジティング・ソング〈I Must Away Love〉、ジェリーのフィドル・チューン〈Monaghan Jig / Monks Jig Set〉と続きますが、圧巻はB面。
先ずはマーティン・カーシーやスティーライでお馴染みの〈Long Lankin〉です。ベロウヘッドのピート・フラッドによるジャージーなドラムを従えたリサの歌声は頗るスリリング。この陰惨なマーダー・バラッドの作品群に新たな名唱をつけ加えています。リサのフィドル・チューン〈Penumbra〉に続く〈Loving Hannah〉は数年前マーガレット・バリーの生涯を描いた舞台でリサがメアリー・マクパートランと唄ったマーガレットのレパートリー。2020年に亡くなったメアリーの死を悼み収録されたようです。
最後の〈Lass of Aughrim〉はジョイスの短編を映画化したジョン・ヒューストン監督の遺作『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』にも登場するアイリッシュ。シャーリー・コリンズの〈Lord Gregory〉やアイラ・セント・クレアの〈Annie of Lochroyan〉など素晴らしいヴァージョンが数多く残るなか、リサは映画で唄われたアイルランドのテナー歌手、フランク・パターソンのクラシカルな歌声に多くを負っているようです。夫君のピアノとフィドルをバックに切々と唄うリサ、素晴らしいの一言です。
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