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カフェトラモナ11月のおすすめです。
上左:John Francis Flynn / I Would Not Live Always(River Lea Recordings, 2021)
ダブリンを拠点に活躍するスキッパーズ・アレイのシンガー兼フルート奏者、ジョン・フランシス・フリンのソロ・デビュー作はラフ・トレード傘下のリヴァー・リーからのお目見え。昨今のランカムやレーベル・メイトのライザ・オニール、イー・ヴァガボンズに続くアイリッシュ・シンギングの新たな息吹を感じます。意外にもシャーリー・コリンズやイーワン・マッコールの曲が並びますがジョンに多大な影響を与えた音楽的ヒーローとか。ナポレオン戦争時代のアンチ・ウォー・ソング〈My Son Tim〉はフランク・ハートの『My Name Is Napoleon Bonaparte』から。またスキッパーズ・アレイの2ndではフルートで演奏していた〈Tralee Gaol〉を2本のホイッスルでローランド・カーク並みの試みも。アルバムの其処彼処で聴けるロス・チェイニーのシンセなどの音響効果が気になるところですが、ディック・ゴーハンを想わせる豪快な歌声にはその点を補って余るものがあります。
上右:Nora Brown / Sidetrack My Engine(Jalopy Records, 2021)
ブルックリン出身のフォーク・シンガー兼バンジョー奏者ノラ・ブラウンの第2作は、パンデミックの昨年夏、ブルックリンの古い地下室で、アンペックスのテープレコーダーにRCAのヴィンテージ・マイクロフォンを使ってモノラル録音されました。真っ白な10インチのアナログ盤にはインスト2曲に挟まれた唄ものが5曲、都合7曲のトラッドが収められています。アルバムのタイトルはケンタッキーのバラッド・シンガー、アディー・グレアムの〈The Very Day I'm Gone〉から。その切々としたミンストレル・バンジョーの弾き語りはアルバム一番の聴きどころです。今回はダウン・ヒル・ストラグラーズのジャクソン・リンチとジャロピー・レコーズから7インチをリリースしているジェロン・ブラインドボーイ・パクストンが参加しています。
下左:Bert Jansch / Best Of Live(Mooncrest, 2020)
バート・ヤンシュの2006年4月22日シェフィールドのメモリアル・ホールにおける公演は既に『Fresh As A Sweet Sunday Morning』や『Strolling Down The Highway』などCD・DVDでリリースされていましたが、本作は同内容の初アナログ化です。〈It Don't Bother Me〉で幕を開け、〈Strolling Down The Highway〉〈Rosemary Lane〉〈Blackwaterside〉など代表曲が並びます。時期的にリリース(2006年9月)直前の『The Black Swan』から数多く唄われていますが、特にスタジオではベス・オートンに唄わせていた〈Katie Cruel〉がバート自身の歌唱で聴くことができ、〈My Donal'〉〈Blues Run The Game〉〈Carnival〉〈October Song〉など60年代のフォーク・クラブ時代の仲間たちの楽曲も取り上げているのが聴きどころでしょう。
下右:Jim Eldon / I Wish There Was No Prisons(Stick Records, 1984)
ワン・ロウ・レコーズからモッシー・クリスチャンとフィドルのデュオ・アルバムをリリースしたジム・エルドンは、スプリングスティーンをフィドルで弾き語る大層なシンガー兼フィドル奏者。本作はビル・リーダーによって録音されたソロ・デビュー作で、トラッドの無伴奏若しくはフィドル弾き語りが多くを占め、朴訥ながらも滋味あるれる歌声に癒されます。また数曲で聴かれるリーズ・バンドとのインストは殆どタフティ・スィフトのベイクウェル・タルトの世界。これを名盤と云わずして何と云いましょう。なおジムの唄う〈The Deserter〉はグロスタシャーのトラヴェラー、ウィギー・スミスの歌唱をお手本にしたもので、〈Ratcliffe Highway〉とも呼ばれるフェアポートの〈The Deserter〉とは別のものと云っていいでしょう。
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