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カフェトラモナ5月のおすすめです。
上左:Various Artists / Fire Draw Near - An Anthology of Irish Traditional Song and Music(River Lea Records, 2021)
リザ・オニールやイェ・ヴァガボンズを輩出したラフ・トレード傘下のリヴァー・リー、その最新作は副題のとおりアイルランドの伝統音楽のアンソロジー。1947年から2013年までの66年間に録音された歴史的音源の中からダブリンで活躍するランカムのイアン・リンチがコンパイルしています。最も古い録音のジョニー・ドーランはパディ・キーナンやデイヴィ・スピラーン等に多大な影響を与えたイーリアン・パイパー。唯一の録音からリールのメドレーが収録されています。またメアリー・ドーランの〈When I Was on Horseback〉はスティーライ・スパンがお手本にしたもの。当時トピックのアンソロジーに収録されていましたが、CD化も配信もされておらず、曲自体も『The Voice of the People』シリーズにも収録されていないので久々のお目見えです。そんなアンソロジーのリリースも現在アイルランドのフォーク・ミュージック・シーンが活況を呈しているからこそ。ラフ・トレードのジェフ・トラヴィスも70年代初期以来のことと云っています。
上右:Jim Moray / The Outlander(Managed Decline Records, 2019)
The Elizabethan Sessionのジム・モレイは「21世紀のイングランドのフォーク界を牽引する存在」。ただどのアルバムも少し大仰になってしまいトラモナでの評価はあまり高くありませんでした。が、この最新作は傑作。サム・スウィーニーやトム・ムーア、ジャック・ラターなど手練れのミュージシャンによるバックアップを見事にコントロールし、ジムは自らの弾き語りを際立てます。M・カーシーやN・ジョーンズが築いたギターでバラッドを唄うと云う方法論を継承し、さらに発展させています。ジョシエンヌ・クラークと素晴らしいデュエットを聴かせる〈Lord Gregory 〉はマディ・プライアやキャサリン・ウィリアムズの歌唱から学んだとのこと。その他スティーヴ・ターナーやクリス・フォスターのレコードにソースを求めるなど今どきで親近感が湧きます。
下左:Jackson Lynch / All By My Ownsome(Jalopy Records, 2021)
ブルックリンのストリング・バンド、ダウン・ヒル・ストラグラーズやニューオーリンズのガレージ・ゴスペル・バンド、ジャクソン&ザ・ジャンクスで活躍するジャクソン・リンチの1stソロ・アルバム。アイルランドで生まれたジャクソンは幼い頃にイーストビレッジに移り住み、メイヨー州に残った祖父はアイリッシュ・フィドラーだったとか。今回は祖父さん譲りの弓捌きは封印し、アンプに繋げたセミアコで自作曲を5曲、伝統的なフォークやブルース、ゴスペルなどを5曲弾き語っています。1曲目のジョシュ・ホワイトの〈In My Time of Dying〉と最後のロニー・ジョンソンの〈Tomorrow Night〉は意図的でしょうか、どちらもディランが唄ったもの。またレオニ・エヴァンスの〈Thanks〉はニューオーリンズ時代の成果でしょう。
下右:Roscoe Holcomb / The Old Church(Jalopy Records, Mississippi Records, 2021)
1972年ロスコー・ホルコムはケンタッキー州の故郷を離れ、マイク・シーガーと西海岸ツアーを行います。2015年にトンプキンス・スクエアからリリースされた1972年のサン・ディエゴ・ステイト・フォーク・フェスティヴァルでのライブ盤もその一環と思われますが、本作はポートランドの古い教会でのパフォーマンスが収められたツアー音源。失われたと考えられていたテープが地元のラジオ局で発見され50年振りに日の目を見たことになります。圧巻はアカペラで唄われる〈The Village Churchyard〉。8分に及ぶこの讃美歌はオリジナル・アルバムでは1975年の『Close To Home』に収録され、その時も1972年のケンブリッジでのライブ・パフォーマンスでした。
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