Vinyl and so on
ジョージの弾くギターとマットのマンドリン、そして二人の歌声で出来上がったアルバムです。グラニーズ・アティックのジョージ・サンサムとダヴテイル・トリオのマット・クイン。それぞれ別のバンドで活躍する新しいシンガーの初顔合わせです。
嬉しいのは1曲目の〈Tyne of Harrow〉をジョージが初めて聴いたのはドロレス・キーン&ジョン・フォークナーの『Broken Hearted I'll Wander』で、続く〈Tailor in the Tea Chest〉はバンドックスの『Bandoggs』だったとか。70年代の名盤からの選曲は往年のファンの心をくすぐります。そしてアカペラで歌われる〈I Live Not Where I Love〉は極めつけ。特にジョージとマットはコメントしていませんが、サイモン・ニコルの『Before Your Time…』で客演したリンダ・トンプソンが忘れられません。歌えなくなったリンダの久々の歌声にどれだけ感動したことか。他にもアンディ・アーヴァインの〈My Son in Amerikay〉やマーティン・カーシーの〈The Death of Andrew〉なども。英国では今もヒューマン・ソングが歌い継がれています。
因みにマット・クインはフラワーズ&フロリックスのメロディオン奏者ダン・クインの息子さんです。
ご来店の際にリクエストしてください。
Stephen Stills『Live At Berkeley 1971』Omnivore Recordings, 2023
1971年夏2ndアルバム『Stephen Stills 2』をリリースしたスティーヴン・スティルスは初めてのソロ・ツアーに出ます。メンフィス・ホーンズを伴っていたため「メンフィス・ホーンズ・ツアー」と呼ばれていますが、リタ・クーリッジとの破局によるスティルスの飲酒が酷く「ドランケン・ホーンズ・ツアー」とも云われるそうです。このツアーの音源はこれまでライノのCDBox『Carry On』にマジソン・スクエア・ガーデンでの〈Do For The Other〉が1曲のみ収録されただけで纏まってリリースされるのはこれが初めて。ツアー最終日の8月20、21日のバークレー・コミュニティ・シアターでの公演が収録されています。
バンドの面子はメンフィス・ホーンズのほかに歌とギターでフラモックスのスティーヴ・フロムホルツが参加し、ポール・ハリス(オルガン)、ジョー・ララ(パーカッション)、カルヴィン・サミュエルズ(ベース)、ダラス・テイラー(ドラムス)とリズム・セクションはそのままマナサスです。収録曲全14曲中前半10曲がギター、ピアノ、バンジョーの弾き語りを中心にしたアコースティック・セット。〈You Don't Have To Cry〉〈The Lee Shore〉ではゲスト出演のデイヴィッド・クロスビーも加わりフロムホルツと3人でCS&Nさながらのハーモニーを聴かせてくれます。エレクトリック・セットでは10分に及ぶ〈Cherokee〉が白眉。メンフィス・ホーンズの面々とのスリリングなソロの掛け合いはニール・ヤングとのギターバトルを彷彿とさせます。
因みにこのツアーでのクリス・ヒルマンとの再会がマナサスに発展したとか。アルバム『マナサス』に収録の〈Jesus Gave Love Away For Free〉は既にここで唄われ、〈Don't Look At My Shadow〉で言及される2万人を集めたLAフォーラムの公演はバークレーの2日前、18日の出来事でした。
ご来店の際にリクエストしてください。
グラスゴーを拠点に活躍するスコットランドのシンガー兼ギタリスト、アラスデア・ロバーツの新作です。ファロウ・コレクティヴなどのプロジェクトやSSWとしての活動のほか、かつてダギー・マクリーンと名作『Caledonia』を残したアラン・ロバーツを父親に持つアラスデアのこと、トラッド・シンガーとしてのキャリアも忘れられません。本作はそんなアラスデアの5枚目のトラッド集。ひとりグラスゴーのスタジオに入り、ギターとピアノで〈Eppie Morrie〉〈The Bonny Moorhen〉など主にスコットランドの古謡を弾き語っています。その中でピアノで唄われる〈Lichtbob Lassie〉はカレン・ダルトンの歌唱で有名な〈Katie Cruel 〉のスコティッシュ・ヴァージョン。リチャード・トンプソンもトピックの80周年記念アルバムで唄っていました。
ご来店の際にリクエストしてください。
Jeb Loy Nichols『Nichols And Phillips live in Germany 2022』
ジェブ・ロイ・ニコルズは2019年の『June Is Short, July Is Long』でバックを務めたウェストウッド・オールスターズのギタリスト、クロヴィス・フィリップスと昨年4月ベルギー、ドイツ、オランダ、スイスを廻るヨーロッパ・ツアーを行いました。本作はそのツアーからドイツはミュンヘンでの公演を収めたライヴ・アルバム。『June Is Short…』の〈I Think I'm Gonna Fall In Love Today〉で始まり、2nd収録の〈Heaven Right Here〉で終わる二人だけのアコースティック・ライヴは全12曲。フェロウ・トラヴェラーズ時代の〈Just A Visitor〉〈GTO〉など長いキャリアから選曲された古い楽曲に加え、近々リリースされるNichols & Phillipsの『Three Fools』からタイトル曲と〈Rain Falling On The Roof At Night〉も演奏されています。
ご来店の際にリクエストしてください。