Vinyl and so on
ハイ・レベル・ランターズを聴いていて、もう一人の唄い手、トム・ギルフェロンの素晴らしさを再確認。トムがJSDバンドのフィドラー、チャック・フレミングと1981年に作ったThe Champion String Bandも素晴らしいアルバムです。超ド級のバラッド「Farewell Lovely Nancy」やデヴィッド・ブロンバーグに教わったという「Midnight on the Water」に繋がる「Laurell Hill Hunt」は涙ものです。
『Along the Coaly Tyne』は、3月15日に84回目の誕生日を迎えたハイ・レベル・ランターズのジョニー・ハンドルが、盟友のルイス・キレンとハイ・レベル・ランターズのパイプ奏者、コリン・ロスと3人で1968年にリリースしたアルバムですが、実は1962年にトピックからリリースされた3枚のEP盤『The Colliers' Rant』『Northumbrian Garland』『Stottin' Doon the Waall』を一枚のアルバムに纏め上げたものでした。
副題にあるとおりノーサンブリア地方の新旧のうたを収録していますが、炭坑作業員の経歴を持つジョニー・ハンドルの作った楽曲も含まれています(ちなみに『Stottin' Doon the Waall』はジョニーの自作自演のEP盤で、副題にSongs of mining and miners, written, sung and played by Johnny Handleとあります。)。
なかでもモンタギュー炭鉱の閉山を唄った「Farewell to the Monty」は彼の長いフォークシンガー人生を代表する楽曲で、この後何回もレコーディングされることになりますが、ここではジョニー自身のアカペラで聴くことができ、続く「Blackleg Miners」と併せてこのアルバムの聴きどころになっています。
スティーライ・スパンに取り上げられ、最近ではオファ・レックスのバージョンも耳新しい「Blackleg Miners」は、炭鉱におけるスト破りを唄ったトラッドですが、コリン・ロスの奏でるノーサンブリアン・スモール・パイプをバックに素晴らしいルイス・キレンの歌唱が堪能できます。
この他にも1715年ジャコバイト蜂起のおり処刑されたダーウェントウォーター伯爵を唄ったジャコバイトソング「Derwentwater's Farewell」などノーサンブリア地方の豊饒なトラディショナル・ミュージックが収録されています。
Track List
A side
01. The Anti-Gallican Privateer (from『Northumbrian Garland』) vocal Louis
02. The Colliers' Rant (from『The Colliers' Rant』) Johnny
03. Up the Raw (from『Northumbrian Garland』) Louis
04. Farewell to the Monty (from『Stottin' Doon the Waall』) Johnny
05. Blackleg Miners (from『The Colliers' Rant』) Louis
06. The Collier Lad (The Filler) (from『Stottin' Doon the Waall』) Johnny
07. Dol-li-a (from『Northumbrian Garland』) Louis
08. The Waggoner (from『The Colliers' Rant』) Johnny
09. Derwentwater's Farewell (from『Northumbrian Garland』) Louis
B side
01. Stottin' Doon the Waall (from『Stottin' Doon the Waall』) Johnny
02. Keep Your Feet Still, Geordie Hinny (from『Northumbrian Garland』) Louis
03. The Stonemason's Song (from『Stottin' Doon the Waall』) Johnny
04. Aw Wish Pay Friday Wad Come (from『The Colliers' Rant』) Louis
05. Durham Big Meetin' Day (from『Stottin' Doon the Waall』) Johnny
06. The Trimdon Grange Explosion (from『The Colliers' Rant』) Louis
07. The Putter (from『The Colliers' Rant』) Johnny
08. Sair Fyeld Hinny (from『Northumbrian Garland』) Louis
ご来店の際にリクエストしてください。
最近入手したCDのうち2組のミュージシャンが偶然にもリアム・ウェルドンの『Dark Horse On The Wind』からの曲をカバーしていました。イングランドのJimmy Aldridge & Sid Goldsmithが『Many A Thousand』で「Via Extasia」を、米のアイリッシュ系SSW、Colleen Raneyが『Standing In Doorways』でタイトル曲の「Dark Horse On The Wind」を歌っています。
リアム・ウェルドンはダブリン出身のトラッド・シンガー。『Dark Horse On The Wind』はドーナル・ラニーとミホール・オ・ドーナルによってプロデュースされ、1976年にリリーズされた超ド級の名盤です。ほぼ全曲無伴奏で歌われ、数曲で自身のバウロン、パディ・オブライエンのアコーディオンやドーナルのブズーキが付くのみ。「暗く暖かな人間味を湛えた」孤高のトラッド・シンギングが堪能できます。
このアルバム以前にリアムがトミー・ピープルズやトリーナ・ニ・ゴーナル、ピーター・ブラウン、マット・モロイと組んでいたグループ「1691」があのボシー・バンドの一つの礎になりました。
心不全のため11月20日に亡くなった英国のフォーク・シンガー、ロイ・ベイリーが2005年にリリースした13枚目のアルバムです。
自身では歌を作らないロイ・ベイリーは、優れたインタープリターとしてレオン・ロッセルソン、サイ・カーンなど多くのソングライターを紹介してきました。ここでもロッセルソンやカーンを始め、ユタ・フィリップス、ディック・ゴーハン、ホリー・ニア、ロブ・ジョンソンなどの楽曲を娘婿のマーティン・シンプソンのギターと盟友ジョン・カークパトリックのボタン・アコーディオン、コンサーティーナをバックに歌っています。
1950年代のフォーク・リバイバルの時代から常に民衆の側に立って歌い続けたロイ・ベイリーの清廉かつ豪胆な歌声を聴きつつ故人のご冥福をお祈りいたします。
それにしてもマーティン・シンプソンとジョン・カークパトリックの伴奏は贅沢です。ちなみに遺作となった『Live at Towersey Festival 2015』では、ジョン・カークの代わりにアンディ・カッティングがバックを務めています。こちらも凄い!!